テヘラン北部シェミーランに広がる旧王室の宮殿群。カージャール朝からパフラヴィー朝にいたる建物が集まり、中核をなす1967年竣工のニアバラン宮殿はインターナショナル・スタイルにイラン伝統の意匠を織り込む。
§1 — 概要概要
テヘラン北部の高台シェミーランに位置する、旧王室の宮殿複合体である。カージャール朝の夏の離宮に起源を持ち、パフラヴィー朝期に整備された複数の宮殿と庭園からなる。複合体は中核のニアバラン宮殿、アフマド・シャー・パビリオン、サーヘブガラーニーイェ宮殿を主要な構成とする。中核をなすニアバラン宮殿は、最後の皇帝モハンマド・レザー・シャーとその一家の公式の住居として1967年に竣工した。革命後は博物館として公開され、内部は王室が去った当時の姿をとどめている。
歴史
19世紀前半、ファトフ・アリー・シャーがテヘラン郊外に夏の離宮を設けたのが始まりとされる。1850年にはナーセロッディーン・シャーの命でサーヘブガラーニーイェ宮殿が建てられ、のちにアフマド・シャー・パビリオンが加わった。新たな宮殿の計画は1958年に始まり、設計はイラン近代建築の指導的存在であったモフセン・フォルーギーが主に担った。建設には中断もあったが1967年に完成した。宮殿は皇族の住まいであると同時に外国の賓客を迎える迎賓の場でもあり、1977年末にはアメリカ大統領を迎えた公式晩餐会もここで催された。一家は革命の起こる1979年初頭までここに暮らした。
建築的特徴
中核のニアバラン宮殿は、ヨーロッパのモダニズム、すなわちインターナショナル・スタイルを基調としながら、イラン伝統のタイル装飾や鏡細工を随所に取り入れている点に特色がある。水平を強調した端正な構成と、内部を埋める漆喰細工・鏡・シャンデリアの豪奢さとが対照をなす。一方、複合体に含まれるカージャール朝の旧宮殿は折衷的な歴史様式をまとい、近代と伝統が一つの敷地に共存する。
意義・現在
ニアバラン宮殿は、20世紀後半に建てられた世界でも新しい王宮の一つであり、近代イランが西欧の建築言語を自国の工芸とどう接合しようとしたかを示す事例である。現在は調度や美術品を収めた博物館として一般に開かれ、パフラヴィー朝末期の宮廷生活を伝える歴史的空間となっている。
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