文化科学宮殿 Palace of Culture and Science
ワルシャワ中心部にそびえる高さ237メートルの高層建築。ソ連からの「贈り物」として1952年に着工、1955年に完成した。レフ・ルードネフ設計の社会主義リアリズム建築で、劇場や博物館を擁する。
§1 — 概要概要
文化科学宮殿(Pałac Kultury i Nauki、略称PKiN)は、ポーランドの首都ワルシャワの中心部に建つ高層建築である。尖塔を含めて高さ237メートルに達し、長らくポーランドで最も高い建物であった。ソビエト連邦からポーランドへの「贈り物」として1950年代に建てられ、社会主義リアリズムの様式をまとう。内部には劇場・博物館・映画館・会議場などが収まり、その名のとおり文化と科学の複合施設として機能している。
歴史
第二次世界大戦で壊滅したワルシャワの再建が進むなか、本建築はソ連の主導で計画された。ソビエトの建築家レフ・ルードネフが設計を担い、1952年に着工、1955年7月に完成した。建設にはソ連から派遣された多くの労働者が携わっている。
竣工当時は「ヨシフ・スターリン記念文化科学宮殿」と名づけられたが、スターリン批判ののちにその名は外された。ソ連支配の象徴と見る向きも根強く、体制転換後には取り壊しの議論さえ起きたが、結局は保存され、2007年にはポーランドの文化財として登録された。
建築的特徴
全体は、中央の塔が幾段にも後退しながら天へ伸びる、いわゆる段状の高層構成をとる。これはモスクワに建つ同時代の高層建築群、いわゆる「セブン・シスターズ」と共通する形式で、アメリカのアール・デコ摩天楼と、ポーランドの歴史的建築の意匠とを折衷したものとされる。
外壁は石材で覆われ、頂部には尖塔がそびえる。各所には文化や科学を寓意する彫刻が配され、正面には天文学者コペルニクスや詩人ミツキェヴィチの像が立つ。装飾を排した近代建築とは対照的に、量塊と象徴的な装飾によって国家の威信を示そうとする、社会主義リアリズムの建築観がよく表れている。30階には展望台が設けられ、市街を一望できる。
意義・現在
文化科学宮殿は、戦後ポーランドにおけるソ連の存在を可視化した、政治的な意味を色濃く帯びた建築である。その出自ゆえに評価は今も分かれるが、ワルシャワの景観に欠かせない目印であり、多くの催しや施設を抱える都市の活動拠点でもある。複雑な歴史の記憶を背負いながら街の中心に立ち続ける姿は、20世紀の東欧が歩んだ道のりを今に伝えている。