マドリード郊外のエル・パルド山中に建つスペイン王室の宮殿。1627年にフェリペ4世の狩猟用離宮として着工し、フアン・ゴメス・デ・モラが設計した。音楽劇「サルスエラ」の名の由来でもあり、現在は国王の執務の場。
§1 — 概要概要
サルスエラ宮殿(スペイン語: Palacio de la Zarzuela)は、スペインの首都マドリードの郊外、エル・パルド山と呼ばれる森林地帯に建つ宮殿。17世紀に王室の狩猟用離宮として築かれ、現在はスペイン国王の執務の場として用いられている。
歴史
1627年、国王フェリペ4世の命により、マドリード近郊のサルスエラの谷に小規模な狩猟用の離宮として着工された。設計は、マドリードのマヨール広場なども手がけた建築家フアン・ゴメス・デ・モラが担い、8年後の1635年に完成した。スペイン内戦(1936–39)で大きな損害を受けたのち、1958年に建築家ディエゴ・メンデスが、当初の躯体と柱廊壁を残しつつ再建し、上階を加えた。1962年から2020年まではフアン・カルロス1世の住居であった。
建築的特徴
ゴメス・デ・モラは、アンドレア・パッラーディオのヴィラに着想を得て、簡素で端正な矩形の平面をもつ建物を構想した。過度の華美を避けた「マドリードのバロック」と称される様式で、スレート葺きの屋根と、柱の並ぶ柱廊を特徴とする。庭園にはイタリア式の三段のテラスと噴水が設けられ、パッラーディオ式の理念が建物と外構の双方に通底する。たび重なる改修を経ても、17世紀の落ち着いた構成が骨格として受け継がれている。
意義・現在
宮殿の名は、かつてここで催された音楽を伴う演劇に由来し、スペイン独自の音楽劇「サルスエラ」の語源となった。現在、サルスエラ宮殿には国王フェリペ6世の執務室が置かれ、前国王の妃ソフィアが居住する。国王一家自身は、同じ敷地内に2002年に建てられた「皇太子館」(Pabellón del Príncipe)に暮らしている。スペイン王室の中枢として、今日も国家の儀礼と政務の舞台であり続けている。