EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture
パシュパティナート
© Chainwit. / CC BY-SA 4.0
FIG. 01 — Q380384
様式 · ネワール建築 時代 · 中世 類型 · 宗教建築 ★ 世界遺産「カトマンズの谷」(1979年登録)の構成資産

パシュパティナート Pashupatinath Temple

カトマンズ盆地、バグマティ川の岸に建つネパール最大のヒンドゥー教寺院。シヴァ神を獣の王パシュパティとして祀り、二重の屋根を金銅板で葺いたネワール建築の代表作である。現在の社殿は1692年の再建にさかのぼる。

FIG. 02 — Location27.7105° N 85.3486° E
NP バグマティ州 カトマンズ
§1 — 概要

概要

パシュパティナートは、ネパールの首都カトマンズの東、バグマティ川の岸に位置するヒンドゥー教寺院である。シヴァ神を「獣の王」パシュパティとして祀り、南アジアにおけるシヴァ信仰の最重要拠点の一つに数えられる。境内は246ヘクタールに及び、本殿のほかに518を数える小祠堂、僧院、石碑、そして川沿いの火葬場(ガート)が広がる。1979年、世界遺産「カトマンズの谷」を構成する記念物群の一つとして登録された。

歴史

寺院の存在は5世紀初頭にはすでに記録に現れる。年代記『ゴーパーララージャ・ヴァンシャーヴァリー』はリッチャヴィ朝の王プラチャンダ・デーヴァによる創建を伝え、別の伝承は五層の堂を建てたスプシュパ・デーヴァに帰する。中世には12世紀初頭のシヴァデーヴァ王による再建、アナンタ・マッラによる屋根の追加が記録されている。木造建築である以上、火災・地震・シロアリによる損耗は避けられず、社殿は幾度も建て替えられてきた。現在の姿は1692年の再建にさかのぼる。周囲の祠堂や僧院はさらに長い時間をかけて堆積したもので、14世紀のラーマ寺院や11世紀の写本に名の見えるグヒエシュワリ寺院も境内に含まれる。2015年のネパール地震では外周の建物が被害を受けたが、本殿と内陣は無事であった。

建築的特徴

本殿は、カトマンズ盆地のネワール人が育てた重層屋根の形式による。正方形の基壇の上に立方体の身舎を置き、その上に二層の屋根を寸法を減じながら架ける。屋根は銅板を金で覆ったもので、頂部には金の宝珠を戴く。基壇から頂までの高さは約23メートル。四方に開く扉はいずれも銀板で覆われる。内部は二重の構成をとり、中心のガルバグリハに本尊を安置し、その外側を回廊状の外陣が巡る。

本尊は高さ約1メートルの石造のリンガである。四方に顔を刻み、それぞれがシヴァの異なる相を表す。深く張り出した軒を支える木製の方杖には神像が彫り込まれており、装飾の主役は石ではなく木の彫刻が担う。石を積み上げるインド平原の寺院とも、瓦を葺いて組物で軒を支える東アジアの楼閣とも異なる、ヒマラヤ南麓に固有の形式である。

意義・現在

パシュパティナートは、建築を単体として見るのではなく、川・火葬場・巡礼路を含む場の全体として理解すべき事例である。ヒンドゥー教徒はこの岸で荼毘に付され、灰をバグマティ川に流されることを望む。この川はやがてガンジス川に通じるとされ、寺院は生から死へ渡る地点として働く。境内は夜明け前から夜まで開かれるが、内陣への立ち入りはヒンドゥー教徒に限られ、それ以外の訪問者は対岸から本殿を望むことになる。ネワール建築の重層屋根はカトマンズ盆地の外へも広がり、13世紀にはネワールの工匠アニコが元朝に招かれて大都に白塔を築いた。この寺院は、その伝統が今も生きた信仰の場として使われ続けていることを示している。

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LAST EDIT — 2026.07.27
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