ポントカサルテの水道橋 Pontcysyllte Aqueduct
北ウェールズ、ディー川の谷に架かる通船可能な水道橋。テルフォードとジェソップが手がけ1805年に完成した、鋳鉄の樋を石造橋脚で支える産業革命期の傑作で、世界最高所の運河水道橋とされる。
§1 — 概要概要
ポントカサルテの水道橋(Pontcysyllte Aqueduct)は、北東ウェールズのリャンゴスレン谷で、ランゴレン運河をディー川の上に渡す通船可能な水道橋である。フロンカサルテとトレヴァーの集落のあいだを結び、運河水道橋としては世界で最も高く、イギリスで最も長い。鋳鉄の樋を細い石造橋脚が空高く支える姿は、産業革命期の土木技術の到達点として名高い。
歴史
未完に終わったエルズミア運河計画の中核として構想された。設計と施工は、現場技師トーマス・テルフォードが、より経験を積んだ主任技師ウィリアム・ジェソップの監督のもとで担った。1795年に基礎石が据えられ、設計・建設・試験に10年を費やして1805年11月に開通した。鋳鉄の部材は近隣プラス・キナストンのウィリアム・ヘイズルダインの製鉄所で鋳造され、総工費は約4万7千ポンドにのぼった。当時としては前例の乏しい大胆な構想であり、その開通は大きな注目を集めた。
建築的特徴
19の径間(18基の橋脚)からなり、全長307m、谷底からの最大高は約38mに達する。重量を抑えるため、石造の橋脚は上方ほど細る中空の構造とされた。革新の核心は、運河の水を従来の粘土張りでなく鋳鉄の樋で保持した点にあり、これにより自重を大きく減じ、谷を一気に渡る無段の水路を実現した。樋の片側には鋳鉄の梁で曳舟道が張り出し、その下を水が満たすため、船はあたかも宙に浮かぶように谷を渡る。
意義・現在
鋳鉄を大規模に用いた初期土木の傑作として、テルフォードの名声を確立した事業である。第一級指定建築物(グレードI)であり、2009年には前後の運河とあわせて「ポントカサルテ水道橋と運河」としてユネスコ世界遺産に登録された。現在もナローボートが静かに行き交い、谷を渡る遊歩と舟運の名所として親しまれている。