ローマ、テヴェレ川に架かる古代ローマの橋。134年、皇帝ハドリアヌスが自らの霊廟(現サンタンジェロ城)へ渡るために築いた。17世紀にベルニーニが手がけた天使像群で名高い。
§1 — 概要概要
サンタンジェロ橋(Ponte Sant'Angelo、古名ポンス・アエリウス)は、イタリア・ローマの中心部とテヴェレ川対岸を結ぶ古代ローマの橋である。134年、皇帝ハドリアヌスが自らの霊廟――現在のサンタンジェロ城――へ至る参道として築いた。橋上に並ぶバロックの天使像によって、ローマでも指折りの記憶に残る橋となっている。
歴史
橋は134年に完成し、当初はハドリアヌス帝の家門名(アエリウス)にちなんでポンス・アエリウスと呼ばれた。中世には、聖ペテロの墓所を目指す巡礼者が城(もとはハドリアヌスの霊廟)へ渡る道としてにぎわい、1450年の聖年には橋の上で群衆が将棋倒しとなって多数の死者を出す惨事も起きている。17世紀、教皇クレメンス9世の依頼により、彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが橋の装飾を一新した。1668年ごろ、キリストの受難の道具を手にした10体の天使像が欄干に据えられ、橋は古代の構造の上にバロックの劇場性をまとうことになった。
建築的特徴
橋はトラバーチン(石灰華)で化粧され、テヴェレ川を五つのアーチで渡る。うち中央の三つは古代ローマ期のもので、両端のアーチは後世の改修による。ベルニーニ自身は二体の天使像を構想したが、その原作は別の教会に納められ、橋上のものは写しに置き換えられている。残りは弟子たちの手で制作された。受難の象徴を捧げ持つ天使たちが川面の上に列をなす構成は、橋を渡る行為そのものを宗教的な道行きへと変える、バロックらしい演出である。
意義・現在
サンタンジェロ橋は、ハドリアヌスの土木技術とベルニーニのバロック彫刻という、千五百年を隔てた二つの時代が一つの構造の上に重なる稀有な作例である。現在は歩行者専用となり、サンタンジェロ城を正面に望む眺めの良い橋として、市民と観光客に親しまれている。