ローマの中心に建つ古代ローマの神殿で、609年からはカトリック教会でもある。ハドリアヌス帝の時代に再建され、無筋コンクリートによる直径43.3メートルのドームと、頂部のオクルスがつくる内部空間で知られる、現存最良のローマ建築の一つ。
§1 — 概要概要
パンテオンは、ローマ中心部に建つ古代ローマの神殿で、西暦609年からはカトリック教会(サンタ・マリア・アド・マルティレス聖堂、通称サンタ・マリア・ロトンダ)でもある。「すべての神々の(神殿)」を意味するギリシア語に由来する名をもつ。円堂(ロトンダ)の前にポルティコ(列柱玄関廊)を構える構成で、頂部にオクルスを開く巨大なドームによって、古代建築のなかでも比類のない内部空間を実現した。現存するローマ建築のなかでもっとも保存状態のよい記念建造物の一つである。
歴史
最初のパンテオンは、アウグストゥス帝の腹心マルクス・アグリッパによって前27年頃に建てられた。これは80年の火災で焼失し、ドミティアヌス帝が再建したが、110年に落雷で再び焼けた。現在の建物は、ハドリアヌス帝の治世(在位117〜138年)に建て直されたものである。正面の破風には「マルクス・アグリッパ、ルキウスの子が、三度目の執政官のときに建てた」と刻まれるが、これは創建者アグリッパへの敬意から、ハドリアヌスが元の銘文をそのまま掲げたものとされる。
建設の年代は史料が乏しく定説をみない。煉瓦の刻印の研究からは、110年の火災ののち、トラヤヌス帝の末期にあたる114年頃に着工され、ハドリアヌス帝のもとで完成、126〜128年頃に奉献されたと考えられている。設計者も特定されていない。トラヤヌス帝に仕えた建築家ダマスカスのアポロドーロスに帰す伝統的な見方があるが——ハドリアヌスとは不和であった——確証はなく、建築に通じたハドリアヌス自身の構想とする説もある。パンテオンは、作者の知られない古代建築の最高峰の一つである。
建築的特徴
パンテオンの核心は、無筋のローマン・コンクリートで築かれた直径43.3メートルのドームにある。内部の高さは直径とちょうど等しく、堂内には完全な球が収まる比例が与えられている。ドーム内面は、上へいくほど小さくなる五段の格間(コファー)で覆われ、頂部には直径約9メートルのオクルスが、ただ一つの採光源として空に開く。コンクリートは下部に重い骨材、上部に軽い骨材を用いて自重を抑えており、これによって支柱なしの大ドームが約1,900年立ち続けてきた。正面のポルティコには、エジプト産花崗岩の一本石によるコリント式の円柱16本が並び、円堂とは対照的な矩形の構えをみせる。
意義・現在
パンテオンが今日まで残ったのは、609年にビザンツ皇帝フォカスの許しを得た教皇ボニファティウス4世が、これをキリスト教の聖堂へと改めたためである。異教の神殿が破却を免れた稀な例であり、以後サンタ・マリア・ロトンダとして崇敬を集めた。その円形のドームと内部空間は、ルネサンス以降の建築家にとって尽きせぬ範となり、各地のドーム建築に影響を与えた。堂内には、自らの希望でここに葬られた画家ラファエロや、イタリア統一後の国王たちの墓がある。ユネスコ世界遺産「ローマ歴史地区」の構成資産でもある。