スイス・ジュネーヴのバスティオン公園に立つ、宗教改革を記念する全長約100メートルの壁面記念碑。1909年に着工し1917年に完成、中央にカルヴァンら四人の改革者の巨像を据える。
§1 — 概要概要
宗教改革記念碑(Reformation Wall/正式名 Monument international de la Réformation)は、スイス・ジュネーヴのバスティオン公園に立つ記念碑である。旧市壁の一部を背に全長およそ100メートル、高さ約9メートルにわたって伸び、宗教改革に関わった人物・出来事・文書を彫像と浅浮彫(バ・ルリーフ)で表す。プロテスタント運動の中心地としてのジュネーヴの記憶を、都市の防壁そのものに刻み込んだ点に特徴がある。
歴史
建設の契機は、ジュネーヴで活動した改革者ジャン・カルヴァンの生誕400年と、カルヴァンが創設したジュネーヴ・アカデミー(現ジュネーヴ大学)の創立350年を記念する事業であった。1908年に国際設計競技が催され、世界各地から71案が寄せられたなかから、シャルル・デュボワ、アルフォンス・ラヴリール、ウジェーヌ・モノ、ジャン・タイヤンの四人のスイス人建築家の案が選ばれた。彫刻はフランスの彫刻家ポール・ランドフスキとアンリ・ブシャールが手がけた。工事は1909年に始まり、第一次世界大戦下の1917年に完成した。
建築的特徴
記念碑の中心には、ジュネーヴ宗教改革を担った四人——ギヨーム・ファレル、ジャン・カルヴァン、テオドール・ド・ベーズ、ジョン・ノックス——の高さ5メートルの立像が並ぶ。その左右には、ヨーロッパ各地と新大陸でプロテスタンティズムを擁護した人物の3メートルの像が配される。背後の壁面には浅浮彫と銘文が刻まれ、宗教改革とジュネーヴ双方の標語「Post Tenebras Lux(闇の後に光あれ)」が大きく掲げられる。淡色の石による簡素で記念碑的な構成は、彫像を主役とし、装飾を抑えた点に20世紀初頭の記念建造物らしさが表れている。
意義・現在
記念碑は、ジュネーヴが16世紀のカルヴァン主義の拠点であった歴史を可視化し、「プロテスタントのローマ」と呼ばれた都市の自己像を今日に伝える。彫像が偶像を退けた改革者たちを表すという逆説をはらみつつ、それぞれの厳しい表情は思想の峻厳さを物語る。バスティオン公園は無料で開放され、ジュネーヴ大学に隣接する市民の散策路として親しまれている。