エチオピア北部の古都アクスムに立つ、巨大な一枚岩のステレ(記念柱)。3〜4世紀…
エチオピア北部の高地に残る、岩盤を直接彫り抜いて造られた11の教会群。12〜13世紀、ザグウェ朝のラリベラ王が地上に「新たなエルサレム」を築こうとして造営したと伝わる、現役のキリスト教聖地である。
§1 — 概要ラリベラの岩窟教会群は、エチオピア北部の高地ラリベラに残る、岩盤を直接彫り抜いて造られた11の教会群である。12〜13世紀、ザグウェ朝の王ラリベラが、聖地巡礼の道が閉ざされた時代に、地上に「新たなエルサレム」を築こうとして造営したと伝わる。聖ゲオルギオス教会(ベタ・ギオルギス)をはじめ、いずれも石を積むのではなく、岩を削り残して形づくられた一体の建造物である。
ラリベラ(旧名ロハ)はザグウェ朝の都であり、アクスム王国の衰退後にエチオピア・キリスト教の中心が移った地である。教会群はラリベラ王(在位およそ1181〜1221年)の事業と伝えられるが、研究者は7世紀から13世紀にかけて複数の段階を経て築かれたとみる。イスラーム勢力の伸張によって聖地エルサレムへの巡礼が困難になるなか、王は石の中にエルサレムを再現しようとした。教会群は今日もエチオピア正教の現役の聖地であり、巡礼と祈りの場であり続けている。
教会は、地表から下へと掘り下げ、上から下へと彫り進める方法で造られた。まず岩盤に溝を巡らせて岩塊を切り離し、その外側と内側を彫り抜いて一体彫成の堂をかたちづくる。11のうち4つは四方を岩から切り離した独立の堂、残りは岩山と一部を共有する。柱や窓、内部の身廊や天井までが、すべて一つの岩から削り出されている。窓や扉にはアクスム以来の意匠が引き継がれ、各堂は地下の通路や塹壕で結ばれている。十字形のベタ・ギオルギスは、深い掘割の底に立つ最も名高い一例である。
ラリベラは、中世エチオピアのキリスト教文明が到達した、岩を刻む建築の比類なき達成を示す。「造る」のではなく「掘り出す」という発想は、世界の建築のなかでも際立っている。1978年、ユネスコ世界遺産に登録された。柔らかな火山岩は水に弱く保存の課題を抱えるが、今も生きた信仰の場として、多くの巡礼者を迎えている。