グリニッジ天文台 Royal Observatory
ロンドン南東、グリニッジの丘に立つ旧王立天文台。1675年にチャールズ2世の命でクリストファー・レンが設計し、翌76年に完成した。本初子午線とグリニッジ標準時の基準地として知られ、現在は博物館となっている。
§1 — 概要概要
グリニッジ天文台(Royal Observatory, Greenwich)は、ロンドン南東部、テムズ川を見下ろすグリニッジ・パークの丘に立つ旧王立天文台である。中核となる建物はフラムスティード・ハウスと呼ばれ、1675年にイングランド王チャールズ2世の命で創設された。航海に不可欠な経度の決定を目的とした英国初の本格的な科学研究施設であり、のちに本初子午線とグリニッジ標準時(GMT)の基準地として、世界の時間と経度の原点となった。
歴史
天文台の設立は1674年、王立兵器局測量総監ジョナス・ムーアの建議がチャールズ2世を動かしたものである。王は同時に初代王室天文官の職を設け、ジョン・フラムスティードを任じた。建物の設計は、かつてオックスフォードで天文学教授を務めた建築家クリストファー・レンが担い、ロバート・フックがこれを補佐して建設を監督した。礎石は1675年8月10日に据えられ、翌1676年夏に完成した。建設費はおよそ520ポンドで、廃城グリニッジ城の基礎を再利用したため、建物の軸は真北から13度ずれることになった。科学業務は20世紀前半に郊外へ移され、跡地は博物館として保存されている。
建築的特徴
フラムスティード・ハウスは、王室天文官の住居と観測機能を兼ねた建物である。最上階には八角形の大広間(オクタゴン・ルーム)が置かれ、八面のうち六面に背の高い窓を開いて天体観測に充てた。レンによる住宅内部の意匠が稀に残る空間として貴重であり、長大な振り子時計を壁内に収めるため天井を高くとっている。屋上には1833年以来、毎日午後1時に落下する赤い報時球(タイムボール)が備えられ、世界最初期の公共報時装置のひとつとして今も稼働する。
意義・現在
1851年に据えられたエアリーの子午環が新たな基準となり、1884年の国際子午線会議でグリニッジが本初子午線(経度0度)に定められた。これにより天文台は、近代天文学の発祥地であると同時に、世界の標準時と航海術の礎を築いた場所となった。現在はグリニッジ王立博物館群の一部として一般公開され、周囲の海事都市グリニッジはユネスコ世界遺産に登録されている。子午線をまたいで立てる場として、時間と空間の原点を体感できる象徴的な施設である。