サン・ジェルマン・ロクセロワ教会 Saint-Germain l'Auxerrois
パリ1区、ルーヴル宮の正面に建つ中世のカトリック聖堂。13世紀を中心に15〜16世紀の増改築を重ね、フランボワイヤン・ゴシックの華麗な前廊で知られる。長く王室・ルーヴルの教区教会だった。
§1 — 概要概要
サン・ジェルマン・ロクセロワ教会(フランス語: église Saint-Germain-l'Auxerrois)は、パリ1区、ルーヴル宮殿の真向かいに建つカトリックの聖堂である。オセールの司教ゲルマヌス(サン・ジェルマン)に捧げられ、13世紀を中心に15世紀と16世紀の大きな改修を重ねた、複数の世紀の様式が層をなす建築である。1608年から1806年まではルーヴル宮の住人——王族や宮廷に仕える芸術家——の教区教会であった。
歴史
この地には初期中世から聖堂が存在したと伝えられる。現在の建物は13世紀に主要部が建てられ、15世紀には正面にフランボワイヤン・ゴシックの華やかな前廊(ポーチ)が加えられ、16世紀には礼拝堂などが整えられた。1572年8月24日の聖バルテルミーの虐殺では、この教会の鐘が惨劇開始の合図とされたと伝えられる。19世紀には西隣に第1区の区役所が新築され、教会と区役所の間に鐘塔が建てられた。区役所はジャック・イニャス・イトルフ、鐘塔はテオドール・バリュの設計で、これらは中世の聖堂本体とは別の同時代の作である。2019年のノートルダム大聖堂の火災後、再建工事のあいだ大聖堂の通常の礼拝がこの教会へ移された。
建築的特徴
身廊・側廊・周歩廊をもつゴシックの構成に、複数の時代の手が加わって全体が成り立っている。最も名高いのは15世紀の前廊で、繊細に枝分かれするフランボワイヤン様式のトレーサリーと尖頭アーチが、後期ゴシックの装飾的到達点を示す。内部にはルーヴルで働いた画家・彫刻家・建築家の墓碑が数多く残り、王室教区教会としての歴史を伝える。鐘のひとつは中世から伝わるもので、フランス史の劇的な場面に結び付けられてきた。
意義・現在
ルーヴルの正面という位置は、この教会を王権と宮廷の歴史に深く結び付けてきた。中世から近代までの増改築が一棟のうちに併存する姿は、パリの教会建築が単一の様式ではなく時代の堆積として成り立つことをよく示している。歴史的記念物(モニュマン・イストリック)に指定され、現在もカトリックの礼拝に用いられる現役の教区教会である。