ミュンヘンに建つ三連アーチの記念門。バイエルン軍を讃えてルートヴィヒ1世が建てさせ、1843年に着工、1852年に完成した。頂部を獅子の四頭立て戦車(クアドリガ)が飾る新古典主義の門である。
§1 — 概要概要
勝利の門(Siegestor)は、ドイツ・ミュンヘンのルートヴィヒ通りとレオポルト通りの境に建つ、三つのアーチからなる記念門である。頂部には、バイエルンの擬人像を乗せた獅子のクアドリガ(四頭立て戦車)が据えられる。もとはバイエルン軍の栄光に捧げられたが、第二次大戦後の修復を経て、現在は平和を諭す碑として立つ。
歴史
門はバイエルン王ルートヴィヒ1世の命により、宮廷建築家フリードリヒ・フォン・ゲルトナー(Friedrich von Gärtner)の設計で計画された。1843年に着工したが、ゲルトナーは1847年に没し、工事はエドゥアルト・メッツガー(Eduard Mezger)が引き継いで1852年に完成させた。頂部の大理石のクアドリガは、ルートヴィヒの美術顧問でもあった彫刻家ヨハン・マルティン・フォン・ワーグナーが手がけた。馬ではなく獅子が選ばれたのは、獅子がバイエルン王家ヴィッテルスバッハ家の紋章であったことによる。第二次大戦で大きな損傷を受け、一時は解体も検討されたが、あえて完全には復元せず、戦災の傷を残したまま修復された。
建築的特徴
門は、古代ローマのコンスタンティヌス帝の門を範とする三連アーチの凱旋門形式をとり、高さは約21メートルに及ぶ。新古典主義の端正な比例のもとに、列柱やメダイヨン、勝利の女神像などの浮彫が施される。戦後に背面へ加えられたヴィルヘルム・ハウゼンシュタインによる銘「勝利に捧げられ、戦争に壊され、平和を諭す」は、門の意味の転回を端的に物語る。
意義・現在
勝利の門は、ルートヴィヒ1世がミュンヘンに整備した古典主義的な都市軸ルートヴィヒ通りの北端を画す、街の象徴的なモニュメントである。軍事的勝利の記念碑として生まれながら、戦後は破壊の記憶と平和への戒めを担う場へと意味を変えた点に、20世紀ドイツの歴史が刻まれている。21世紀に入って、残された彫像群も丁寧に清掃・修復された。