中国北辺に東西数千キロにわたって連なる城壁の総称。前7世紀の諸侯国の壁に始まり…
イングランド南部、ソールズベリー平原に立つ先史時代の巨石記念物。前3000年ごろから千数百年をかけて築かれ、まぐさを載せた環状列石は同時代に例がなく、太陽の運行に合わせた配置で知られる。
§1 — 概要ストーンヘンジは、イングランド南部ウィルトシャーのソールズベリー平原に立つ先史時代の巨石記念物である。エームズベリーの西約3キロ、新石器時代から青銅器時代にかけての墳墓・記念物が密集する一帯の中心に位置する。直立する砂岩(サーセン石)の環に、水平のまぐさ石(リンテル)を渡した独特の構成で知られ、ヘンジに巨石を立てた到達点として先史建築史に欠かせない。設計者は伝わらず、複数世代の共同作業によって築かれた。
建造は一度きりではなく、前3000年ごろから前1600年ごろまで、千数百年にわたる複数の段階を経ている。最初期は前3000年ごろに掘られた円形の堀と土塁で、内側には56基の穴(オーブリー・ホール)が並び、火葬された人骨が多数埋葬された。当時のブリテン島で最大級の墓地であったとされる。次の画期は前2500年ごろで、北方のマールバラ・ダウンズ(ウェスト・ウッズ)から運ばれた巨大なサーセン石が立てられ、今日見る環状の姿が整えられた。さらに前2400〜前2200年ごろには、約250キロ離れたウェールズのプレセリ丘陵から運ばれた小ぶりの青色石(ブルーストーン)が現在の配置に据えられている。石を切り出し、加工し、起こす作業には、組織された多数の人手を要した。
最大の特徴は、木造の技法を石に持ち込んだ点にある。直立石とまぐさ石はほぞ(mortise)とほぞ穴(tenon)で固定され、円環をなすまぐさどうしは相じゃくり(さねはぎ)で接がれている。これは同時代の石造記念物に類を見ない手法である。外周のサーセン環の内側には、二本の直立石に一枚のまぐさを載せたトリリトン五基が馬蹄形に並ぶ。直立石は上方へわずかに細められ、まぐさは緩やかに湾曲しており、地上から見上げたときに均整が崩れないよう視覚的な補正が施されている。全体は夏至の日の出と冬至の日の入りの方角に揃えられ、天体の運行と深く結びつけて構想されたことがうかがえる。
ストーンヘンジは、文字を持たない社会が成し遂げた高度な土木・石工技術の証であり、その目的をめぐっては祭祀の場・墓地・天文観測の装置など、多くの説が重ねられてきた。中世には魔術師マーリンが築いたとする伝説も語られたが、いずれも後世の解釈にすぎない。1882年の古代記念物保護法以来の指定記念物であり、1986年には周辺の遺跡群とともに「ストーンヘンジ、エイヴベリーと関連する遺跡群」としてユネスコ世界遺産に登録された。現在はイングリッシュ・ヘリテッジが管理し、年間を通じて多くの来訪者を迎えている。