ロンドンのテムズ川南岸に立つ近現代美術館。発電所だったバンクサイド発電所をヘルツォーク&ド・ムーロンが改修し、2000年に開館した。巨大なタービン・ホールで知られる。
§1 — 概要概要
テイト・モダン(Tate Modern)は、ロンドンのテムズ川南岸、サザーク地区に立つ国立の近現代美術館である。セント・ポール大聖堂と川を挟んで向かい合う立地で、もとは火力発電所であったバンクサイド発電所を改修して2000年に開館した。設計(改修)はスイスの建築家集団ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)。旧発電所のタービン室を巨大な吹き抜けの「タービン・ホール」として残した大胆な再生で知られ、世界で最も来館者の多い近現代美術館の一つとなっている。
歴史
バンクサイド発電所は、戦後英国の電力需要に応えるため、建築家ジャイルズ・ギルバート・スコット(Giles Gilbert Scott)の設計で1947年から1963年にかけて二期に分けて建設された。煉瓦で覆われた鉄骨造の巨大な量塊で、中央には高さ約九九メートルの煙突がそびえる。石油価格の高騰により1981年に操業を停止し、その後は取り壊しの危機にさらされた。1992年、テイト・ギャラリーが近現代美術専用の新美術館の構想を発表し、1994年にこの発電所が建設地に選ばれる。国際設計競技には一四八件の応募があり、1995年にヘルツォーク&ド・ムーロンが選ばれた。総工費一億三千四百万ポンドをかけたコンバージョン工事は1995年から進められ、2000年5月に開館した。来館者は初年度に予想の倍を超え、増床のため2016年には同じ設計者によるブラヴァトニク・ビル(旧称スイッチ・ハウス)が増築されている。
建築的特徴
設計者は旧発電所の力強い産業的な性格をあえて残し、最小限の介入で美術館へと転用した。最大の見せ場は、かつてタービンが据えられていた長大な空間を吹き抜けの広場とした「タービン・ホール」で、大規模なインスタレーションの舞台となる。屋根上に水平に渡された半透明のガラスの「ライトビーム」は、スコットの煉瓦の量塊に新たな表情を加え、夜には発光する。展示室は天井高を変えて多様な作品に対応し、発電所時代の大窓やクレーンの痕跡が随所に残る。既存の構造物を活かしながら現代の用途に応える、コンバージョン建築の代表例である。
意義・現在
テイト・モダンの開館は、衰退していたテムズ川南岸の再生を牽引し、ミレニアム・ブリッジによってセント・ポール大聖堂と歩いて結ばれることで、ロンドンの都市構造そのものを変えた。産業遺産を解体せずに転用するその手法は、21世紀の建築が向き合う「改修・コンバージョン」の潮流を象徴する先駆例として高く評価されている。設計者ヘルツォーク&ド・ムーロンはこの仕事で国際的名声を確立し、2001年にプリツカー賞を受けた。旧発電所の記憶をまといながら、現代美術の世界的な拠点として機能し続けている。