アメリカ国防総省の庁舎。第二次世界大戦下の1941年から、わずか16か月で建てられた。五角形の平面と五重の同心円状の回廊をもち、延床面積で世界最大級のオフィスビルとして知られる。「ペンタゴン」は米軍そのものの代名詞ともなっている。
§1 — 概要概要
ペンタゴン(The Pentagon)は、アメリカ・ヴァージニア州アーリントンに立つ、国防総省(旧・陸軍省)の庁舎である。その名のとおり五角形の平面をもち、延床面積で世界最大級のオフィスビルとして知られる。第二次世界大戦のさなかに、驚くべき速さで建てられた。今日では、アメリカ軍そのものを指す言葉としても用いられる。
歴史
1940年代の初め、肥大化する陸軍省は、首都ワシントンの十七もの建物に分散していた。これを一つ屋根の下にまとめるため、巨大な庁舎の建設が決まる。設計は、主任建築家ジョージ・バーグストロームと、その協力者デイヴィッド・ウィトマーが担った。
工事は、奇しくも後年の同時多発テロと同じ9月11日――1941年9月11日に始まった。鋼材が不足する戦時下のため、構造には鉄筋コンクリートが用いられ、ポトマック川の砂が大量に使われた。設計と施工が同時並行で進む突貫工事のなか、わずか十六か月後の1943年1月に竣工した。建設は陸軍工兵隊が監督し、レズリー・グローヴス大佐がこれを統括した。請負はジョン・マクシェインが担った。2001年9月11日には、同時多発テロにより西側面に旅客機が突入し、多くの命が失われたが、建物は一年ほどで復旧された。
建築的特徴
建物は、五つの辺をもつ五角形をなし、五階建てで、五重の同心円状の回廊が中庭を囲む。中心には、五エーカーの五角形の広場が開ける。回廊の総延長は約28キロメートルに及ぶが、設計の妙により、どの地点へも十分ほどで歩いて行けるという。外観は、インディアナ産の石灰岩を張り、角ばった列柱を連ねた、装飾を切りつめた古典主義――簡約古典主義の意匠である。華美を避け、機能と速度を最優先した、戦時の合理主義がそのまま形になっている。
意義・現在
ペンタゴンは、巨大な官僚機構を効率的に収めるという目的のもとに生まれた、20世紀の機能主義建築の記念碑である。当初はその素っ気なさを批判されもしたが、やがてアメリカの軍事力の象徴として、世界に知られていった。1992年、アメリカ合衆国の国定歴史建造物に指定されている。