メキシコ中央高原、メキシコシティ北東に広がる古代都市の遺跡。紀元前後に計画都…
グアテマラ北部の熱帯雨林にそびえる、古代マヤ最大級の都市遺跡。古典期に強国の都として栄え、70メートル近い神殿ピラミッドが密林の樹冠を抜く。コーベルヴォールトの建築を伝える複合世界遺産である。
§1 — 概要ティカルは、グアテマラ北部ペテンの熱帯雨林に広がる、古代マヤ最大級の都市遺跡である。古代にはヤシュ・ムトゥルと呼ばれ、古典期のマヤ世界で最も強大な王国の一つの都として栄えた。密林の樹冠を抜いてそびえる神殿ピラミッド群は高さ70メートル近くに達し、マヤ建築の壮大さを今に伝える。
紀元前4世紀ごろには記念建築が築かれ始め、紀元200年から900年ごろの古典期に都市は最盛期を迎えた。とりわけ7〜8世紀には、テオティワカンとの交流や近隣カラクムルとの抗争を経て、政治・経済・宗教の一大中心へと発展した。889年の石碑を最後に記録は途絶え、10世紀ごろまでに都市は放棄されて密林に呑まれた。19世紀に再発見され、20世紀半ば以降に大規模な発掘と修復が進められている。
建築は石灰岩で築かれ、急峻な階段ピラミッドの頂に小さな神殿を戴き、その上にさらに「ルーフコム」と呼ばれる飾り壁を高く立ち上げる。室内は、石を内側へせり出させて覆うコーベルアーチによって、狭く高い空間をかたちづくる。大広場をはさんで一号神殿(大ジャガー神殿)と二号神殿が向かい合い、北のアクロポリスには歴代王の墓が累々と重なる。天に伸びる垂直性が、ティカル建築の際立った性格である。
ティカルは、マヤ文明の政治と信仰、そして天文・暦の知が一体となった都市の姿を、最もよく今に伝える遺跡である。周囲の豊かな自然とともに、1979年に文化と自然の両面が評価され、複合遺産としてユネスコ世界遺産に登録された。発掘の進む現在も、なお多くの構造物が密林の下に眠るとされ、調査が続けられている。