トゥールーズ経済学院 Toulouse School of Economics
フランス南部「バラ色の街」トゥールーズの旧市街の境界に立つ、トゥールーズ経済学院の校舎。アイルランドのグラフトン・アーキテクツが設計し、2009年の国際競技を経て2019年に竣工した。地元の煉瓦とコンクリートによる現代建築である。
§1 — 概要概要
トゥールーズ経済学院(Toulouse School of Economics, TSE)の校舎は、フランス南部トゥールーズの旧市街と新市街の境、ガロンヌ川とブリエンヌ運河が出会う一角に立つ大学建築である。トゥールーズ第1キャピトル大学に属する経済学の研究・教育機関の拠点として建てられた。設計は、2020年のプリツカー賞を受賞したアイルランドの建築家ユニット、グラフトン・アーキテクツ(イヴォンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラ)による。「バラ色の街」と呼ばれるトゥールーズの煉瓦の街並みを、現代の語法へ翻案した作品である。
歴史
計画は、2009年の国際設計競技でグラフトン・アーキテクツの案が選ばれたことに始まる。敷地は中世の市壁が途切れる場所にあたり、建築家はこの「切れ目」を、限界ではなく越えるべき敷居と捉えた。トゥールーズ第1キャピトル大学が自ら施工の主体となって整備を進めた点でも異例の事業であり、校舎は2019年に竣工した。翌2020年9月のヨーロッパ文化遺産の日に一般へ公開され、フランスの建築賞エケール・ダルジャン2020などを受賞している。
建築的特徴
建築家はトゥールーズを「橋、河岸の壁、市壁、傾斜路、遊歩道、煉瓦の控え壁、塔、ひんやりとした内部、回廊と中庭の街」と捉え、その諸要素を再構成して一棟にまとめた。外装の主役は地元で焼いた煉瓦で、長さ42センチほどの細長い形は、隣接する中世の市壁に合わせて石灰モルタルで積まれている。平面は奥行き約10.8メートルの細長い「棟(バー)」を連ねた構成をとり、各室に自然光と通風が行き渡るよう、向きごとに立面の断面が変えられている。内部はコンクリートの構造体が骨格をなし、煉瓦の被膜・中庭・空中の回廊・テラスが組み合わされて、室内と都市のあいだに視線の往来を生んでいる。重厚な量塊と構築性は、グラフトンがリマやミラノで示してきた手法につらなる。
意義・現在
トゥールーズ経済学院の校舎は、土地固有の素材と記憶に根ざしながら現代建築を成立させた作例として高く評価されている。設計者のファレルとマクナマラは、本作などの一連の仕事により、2020年のプリツカー賞を女性同士の組として初めて受賞した。校舎は約350人の研究者・職員・博士課程学生のための研究室や、三つの大講堂などを擁し、現役の研究・教育拠点として機能している。歴史都市の只中に置かれた重量感ある量塊は、ガロンヌ川沿いの景観のなかで、すでに確たる存在となっている。
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