ヴァドステーナ城 Vadstena Castle
スウェーデン中部、ヴェッテルン湖畔に立つヴァーサ朝の城。1545年にグスタフ・ヴァーサが防御の城塞として起工し、その子らの手で1620年までにルネサンス様式の王宮へ姿を変えた。北欧で最もよく保存されたルネサンス城とされる。
§1 — 概要概要
ヴァドステーナ城(スウェーデン語: Vadstena slott)は、スウェーデン中部エステルゴットランド県の都市ヴァドステーナで、ヴェッテルン湖に臨んで立つ城である。当初は南方からの脅威に備える要塞として築かれ、のちにヴァーサ朝の歴代の王の手で壮麗なルネサンスの王宮へと改められた。堀と円形の砲塔を残す、北欧で最もよく保存されたルネサンス城の一つに数えられる。
歴史
1545年、国王グスタフ・ヴァーサ(グスタフ1世)が、ストックホルムを南方の敵から守るための要塞として造営を始めた。当初は湖に面した三棟の石造建築、土塁、堀、四基の円形砲塔からなる軍事施設であった。1550年代、王子マグヌスがエステルゴットランド公領を得ると、要塞は居住に適した城館へと改築が始まる。その兄ヨハン3世はとくにこの城に深い関心を寄せ、フランドル出身の棟梁アレント・デ・ロイにルネサンス様式の城への造営を委ねた。火災による中断を経て、最上階の大広間と礼拝堂が整えられ、1620年に造営はようやく完成した。
建築的特徴
平面は、二層の角棟(パヴィリオン)を一層の翼屋で結ぶ構成をとる。デ・ロイの手で階段塔や扉口の階段が加えられ、軍事的な要塞は表象的な宮殿へと転じた。最上層には国家の大広間(リクスサール)二室と城内礼拝堂が置かれ、宮廷儀礼の舞台となった。完成時には外壁を白く塗り、扉や窓の周囲をファールン産の赤で縁取って、ルネサンスらしい明快な色彩がほどこされた。湖水と堀、四隅の砲塔は、防御の城として出発したこの建物の出自を今に伝えている。
意義・現在
ヴァドステーナ城は、ヴァーサ朝の歴代の王が代々造営に関わった、王朝の共同事業ともいえる城である。グスタフ2世アドルフによる議会の開催や、クリスティーナ女王の時代の初期のオペラ上演など、政治と文化の舞台ともなった。1716年まで王宮として用いられたのち穀物倉などに転用され、1899年からは県の文書館が置かれている。1935年にスウェーデンの国有建造物記念物に指定され、現在は城博物館として公開されている。