アムステルダムのミュージアム広場に建つ、フィンセント・ファン・ゴッホの作品を集めた美術館。デ・ステイルの建築家リートフェルトが設計した本館が1973年に開館し、1999年に黒川紀章の楕円形の展示棟が加わった。世界最大のゴッホ・コレクションを収める。
§1 — 概要概要
ファン・ゴッホ美術館(Van Gogh Museum)は、オランダ・アムステルダムのミュージアム広場に建つ美術館で、フィンセント・ファン・ゴッホの絵画・素描・書簡を世界で最も多く所蔵する。建物は、本館とその後に増築された展示棟という性格の異なる二棟と、両者をつなぐガラスのエントランス棟から構成される。本館はデ・ステイルの建築家ヘリット・リートフェルトの設計、楕円形の展示棟は日本の黒川紀章の設計による。
歴史
ファン・ゴッホの作品は、画家の死後その弟テオの手に渡り、一族のもとに守られてきた。1962年、コレクションが散逸することを恐れた遺族とオランダ政府は、作品を新設の財団に託す代わりに、国が美術館を建設・運営するという協定を結んだ。これが美術館設立の基礎となる。本館は、家具デザイナーとしても知られるリートフェルトが1963年に設計を委嘱されたが、彼は翌1964年に没し、建物は事務所の共同経営者であったファン・ディレンとファン・トリヒトが引き継いで1973年に開館させた。1999年には、日本財団などの支援を得て黒川紀章の設計による展示棟が完成。さらに2014年から、黒川の事務所が遺した構想をもとにハンス・ファン・ヘーウェイクがガラス張りの新エントランス棟を実現させ、2015年に開館した。
建築的特徴
本館は、長方形の平面をもつ四層の建物で、幾何学的な明快さと、開かれた明るい空間を重んじるリートフェルトのモダニズムが反映されている。中央の吹き抜けでは、高い位置の天窓から差し込む光が階段室と展示室を照らす。これに対し黒川の展示棟は、立方体を基調とする本館への対比として楕円形の平面を選び、非対称の構成をとる。チタンで覆われた半地下の棟は、環境と建築、東洋と西洋の「共生」という黒川の思想を体現したものである。2015年のエントランス棟は、冷間曲げ加工した積層ガラスのファサードが構造の一部も兼ねる、きわめて軽快で透明な建築として、性格の異なる二棟を一つの全体へと結びつけている。
意義・現在
ファン・ゴッホ美術館は、一人の画家の生涯と画業をたどることに特化した美術館として、世界有数の入館者を集める。建築の面では、デ・ステイルに連なるリートフェルトの簡潔なモダニズムと、メタボリズムを唱えた黒川の有機的な造形という、20世紀の二つの建築思想が一つの施設のうちに並び立つ点に意義がある。常設展はファン・ゴッホの画業を時代順にたどる構成をとり、同時代の画家の作品もあわせて展示される。オランダで最も入館者の多い美術館の一つであり、近代建築の異なる二つの局面を一棟のうちに読み取れる場でもある。