名築が収録する公開済みの建物のうち、すでに失われたものは21件ある。前3世紀に地震で倒れたロドス島の巨像から、2025年に予定どおり解体されたパリの仮設展示館ま…
東京・銀座に建っていた、黒川紀章設計のメタボリズムの代表作。1972年完成。140個の交換可能なカプセルを塔に取り付けた未来都市の構想だったが、2022年に解体された。
§1 — 概要中銀カプセルタワービル(Nakagin Capsule Tower)は、東京・銀座に建っていた集合建築で、黒川紀章の設計による。1972年に完成し、建築と都市を新陳代謝するものととらえる「メタボリズム」の理念を、最もよく実現した作品として世界的に知られた。2022年に解体された。
高度経済成長期の日本で、メタボリズムは、成長し変化する都市の未来像を描いた。中銀カプセルタワーは、その思想を初めて本格的に建てた建物である。コンクリートの二本の塔に、工場で作られた140個の箱型のカプセルが取り付けられた。カプセルは劣化すれば交換できる、という構想であったが、実際に交換されることは一度もなく、老朽化が進む。保存運動もむなしく、2022年、ついに解体された。
二本の塔が、エレベーターや配管といった長く使う「幹」を担い、そこに、住戸となるカプセルが一つずつボルトで取り付けられている。一個のカプセルは、四畳半ほどの広さに、丸窓、作りつけのベッドや収納、テレビや電話までを備えた、独立した住空間であった。寿命の短い部分(カプセル)と長い部分(構造体)とを分け、前者だけを取り替えるという発想は、生物の新陳代謝になぞらえられた。
中銀カプセルタワーは、戦後日本の建築が世界に示した、最も独創的な未来像の一つである。カプセルが交換されることなく解体された結末は、理想と現実の隔たりをも物語る。解体に際して一部のカプセルは取り外して保存され、美術館などに収められた。建物は失われたが、その思想は建築史に深く刻まれている。
名築が収録する公開済みの建物のうち、すでに失われたものは21件ある。前3世紀に地震で倒れたロドス島の巨像から、2025年に予定どおり解体されたパリの仮設展示館ま…