ヴュルツブルク大聖堂(聖キリアン大聖堂)は、ドイツ・バイエルン州ヴュルツブルクに建つロマネスク様式の司教座聖堂。11世紀に建設され、ドイツ有数の規模を誇るロマネスク建築として知られる。
§1 — 概要概要
ヴュルツブルク大聖堂は、ドイツ・バイエルン州の都市ヴュルツブルクに建つカトリックの司教座聖堂である。フランケン地方にキリスト教を伝えた殉教聖人キリアンに捧げられ、正式には聖キリアン大聖堂と称する。全長およそ103メートルに及ぶ堂々たるバシリカ式の聖堂で、ドイツに現存するロマネスク様式の教会堂のなかでも有数の規模を誇る。マイン川にほど近い旧市街の中心に位置し、領主司教の都であったヴュルツブルクの宗教的中核をなしてきた。
歴史
聖堂の建設は1040年、司教ブルーノのもとで始められた。ブルーノの没後は司教アーダルベロが事業を引き継ぎ、1075年までに身廊を中心とする主要構造が完成した。献堂式が執り行われたのは1187年のことである。中世後期には側廊がゴシック様式で改められ、18世紀には内部が大きく手を加えられた。1701年から04年にかけてジョヴァンニ・ピエトロ・マーニが高バロックの漆喰装飾を施し、1721年からはバルタザール・ノイマンが北側にシェーンボルン墓所礼拝堂を設計している。第二次世界大戦末期の1945年、空襲によって聖堂は甚大な被害を受け、翌1946年には身廊の壁体が崩落した。戦後はハンス・シェーデルらの主導で再建が進められ、1967年に復興が完了した。
建築的特徴
平面は三廊式のバシリカで、東西に長い身廊の両端に祭壇部と塔を備えた、神聖ローマ帝国期のロマネスク建築の典型を示す。重厚な壁体と半円アーチによる秩序ある構成が外観を引き締める一方、内部には後世のバロック装飾が層をなして残る。マーニによる白いスタッコ細工やノイマンの礼拝堂は、簡素なロマネスクの骨格と華麗な装飾とが共存する独特の空間を生んでいる。戦後の再建では、被災部を簡潔に復することで、残された歴史的部分との対比が意識された。
意義・現在
ヴュルツブルク大聖堂は、中世から近世、そして戦後復興へと至る千年近い歴史を一身に刻む建築である。ロマネスクの基本構造の上に各時代の手が加えられ、ドイツ建築史の重層性を体現する。バイエルン州の文化財(建造物記念物)として保護され、今日もヴュルツブルク司教区の母聖堂として礼拝と祈りの場であり続けている。