ピサの斜塔 Leaning Tower of Pisa
ピサ大聖堂の鐘楼。1173年に着工したが、軟弱な地盤のために傾きはじめ、二度の長い中断をはさんで、約200年後に完成した。傾いたまま倒れずに立つ、白大理石のロマネスクの円塔であり、ピサのドゥオモ広場を成す名建築の一つである。
§1 — 概要概要
ピサの斜塔(Torre di Pisa)は、イタリア・トスカーナ地方のピサにある、ピサ大聖堂の鐘楼である。ドゥオモ広場(ピアッツァ・デイ・ミラーコリ=「奇跡の広場」)に、大聖堂・洗礼堂とともに立つ。約4度傾いたまま倒れずに建つことで知られ、イタリアを象徴する建築として、世界中から人を集めている。
歴史
塔の建設は、1173年8月に始まった。設計者については、ボナンノ・ピサーノとする伝えが古くからあるが、近年では、洗礼堂を手がけたディオティサルヴィを原設計者とみる説も唱えられている。ところが、三層目まで築かれた1178年頃、軟弱な地盤が不均等に沈み、塔は傾きはじめた。
折しも都市国家どうしの戦乱が起こり、工事はおよそ一世紀にわたって中断する。皮肉にも、この長い休止のあいだに地盤が締まり、塔の早期の倒壊は免れたと考えられている。1272年、ジョヴァンニ・ディ・シモーネが工事を再開し、傾きを補うために、低い側の各層をわずかに高く積んだ。そのため塔は、ゆるやかに弧を描く姿となった。最上部の鐘楼は、1372年、トンマーゾ・ピサーノによって完成された。着工からおよそ200年が経っていた。
建築的特徴
塔は、白い大理石で築かれた円筒形の鐘楼である。最下層は壁面に半円アーチを連ねた装飾とし、その上に、開廊(オープン・アーケード)の層を六段重ねる。円柱の連なりが層ごとに塔を取り巻く、ピサ・ロマネスクの典型的な意匠である。傾きを補正するためにわずかに湾曲した形は、構造の知恵の跡でもある。最上部の鐘楼には、尖頭アーチなどゴシックの要素も取り入れられた。
意義・現在
ピサの斜塔は、本来は欠陥であった傾きが、かえって唯一無二の魅力となった、稀有な建築である。物理学者ガリレオが、ここから重さの異なる物を落として落体の法則を示したという逸話でも名高い(ただし伝説とされる)。20世紀末には、傾きの進行を止める大規模な補強工事が行われた。1987年、ドゥオモ広場の一部としてユネスコ世界遺産に登録されている。