イスタンブール北方でボスポラス海峡を渡る第3の橋。2016年開通の道路鉄道併用橋で、高さ322メートルの主塔と、斜張橋と吊橋を組み合わせた構造を特徴とする。
§1 — 概要概要
ヤウズ・スルタン・セリム橋(Yavuz Sultan Selim Köprüsü、第3ボスポラス橋)は、トルコ・イスタンブールの北方でボスポラス海峡を渡る道路鉄道併用橋である。ヨーロッパ側のサルイェルとアジア側のベイコズを結び、海峡に架かる橋としては既存の2橋に次ぐ第3の橋にあたる。
歴史
イスタンブール北部を迂回する北マルマラ高速道路計画の一環として建設され、2013年5月に起工、2016年8月26日に開通した。橋名は、16世紀にエジプトやアラビアへ版図を広げたオスマン帝国第9代スルタン、セリム1世(ヤウズ・スルタン・セリム)に由来する。設計はスイスの技師ジャン=フランソワ・クラインとフランスの構造技師ミシェル・ヴィルロジュー(ジュネーヴのT-ingénierie社)が担い、施工はトルコ・イタリアの企業連合が請け負った。
建築的特徴
橋は、主塔から斜めに張ったケーブルで桁を支える斜張橋と、主塔間に渡したメインケーブルから桁を吊る吊橋を組み合わせた複合構造をとる。これにより、約1,408メートルに及ぶ長い中央径間と、上下8車線の道路と複線鉄道を載せる幅58.4メートルの広い桁を両立させた。A字形の主塔は高さ約322メートルに達し、橋の高さとしては世界有数である。
意義・現在
ヤウズ・スルタン・セリム橋は、斜張橋と吊橋の利点を併せもつハイブリッド形式を大規模に実現した点で、現代の長大橋設計における注目すべき事例である。道路と鉄道を一体で渡す構成は、過密化するイスタンブールの交通を都市外縁で受け止める基幹インフラとして計画された。既存の2橋に集中していた通過交通を都市外縁で引き受け、ヨーロッパとアジアを結ぶ物流動脈の一部をなす。幅58.4メートルの桁は世界でも最も広い橋のひとつに数えられ、海峡をまたぐ巨大な主塔とともに、ボスポラスの新たな景観要素ともなっている。