ユハリ・ギョヴハル・アガ・モスク Yukhari Govhar Agha Mosque
アゼルバイジャン・シュシャの中央広場に建つシーア派モスク。1883–85年、カラバフの名匠キャルバライ・サフィハン・カラバヒがゴウハル・アガの寄進で再建した、石と煉瓦による双尖塔のジュマ・モスクである。
§1 — 概要概要
ユハリ・ギョヴハル・アガ・モスク(Yuxarı Gövhər Ağa məscidi、「上ギョヴハル・アガ・モスク」の意)は、アゼルバイジャン・カラバフ地方の都市シュシャの中央広場に建つシーア派のモスクである。シュシャのジュマ・モスク(金曜モスク)として町の象徴とされ、町の下手にある同名の「アシャギ(下)」モスクと対をなす。寄進者ゴウハル・アガは、カラバフ・ハン国を築いた一族のイブラヒム・ハリル・ハンの娘にあたる。
歴史
当地のモスクの起源は18世紀後半に遡り、イブラヒム・ハリル・ハンの時代に簡素な礼拝所が設けられたとされる。現在の石造建築は、その後の改築を経て1883年から1885年にかけて、建築家キャルバライ・サフィハン・カラバヒによって、ゴウハル・アガの費用で完成した。ソビエト期にはモスクとしての機能を停止して歴史博物館に転用され、1988年に再び礼拝の場として開かれた。第一次ナゴルノ・カラバフ戦争でシュシャがアルメニア系勢力の管理下に入った1992年以降、建物は荒廃し、ミナレットや内部が損傷した。2020年の第二次戦争を経てアゼルバイジャンがシュシャの統治を回復すると、2021年から2023年にかけて大規模な修復が行われ、機能するモスクとして整えられた。
建築的特徴
礼拝室は6本の石柱によって三廊に分かたれ、平面はほぼ正方形をなす。北側には三連の梁を架けたヴェランダ(前室)が付き、その両隅に2本のミナレットが立つ。尖塔は煉瓦造の円筒形で、段ごとに異なる煉瓦の積み方による水平の帯状文様をもつ。これはサフィハン・カラバヒがカラバフ各地のモスクで用いた手法で、石造の本体と煉瓦の尖塔という対比が外観を特徴づける。ヴェランダ上階のバルコニーは女性用の礼拝空間にあてられた。
意義・現在
ユハリ・ギョヴハル・アガ・モスクは、シュシャの歴史的町並みを代表する建築であり、アラン建築学派の系譜に連なる19世紀カラバフの建築を伝える記念物として、国の重要文化財に登録されている。同モスクは紛争のなかで度重なる損傷と修復を経てきたが、2023年の修復を経て、現在は礼拝の場として用いられている。