EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

エレラ様式

Herrerian style
年代
1560 — 1650
地域
スペインおよびスペイン領
時代
ルネサンス

エレラ様式(Herrerian style/estilo herreriano)は、16世紀後半のスペインに成立し、17世紀を通じて同国とその領土の公共建築を規定した建築様式である。名はエル・エスコリアルを完成させた建築家ファン・デ・エレーラに由来する。

本質は、ルネサンスの比例体系を保持したまま装飾を極限まで削ぎ落とした点にある。同時代のスペインでは「デソルナメンタード(無装飾の)」とも呼ばれた。壁面は加工した石を平滑に積んだ大面積の面として扱われ、オーダーの柱やレリーフで分節されることが少ない。代わりに、規則正しく反復する矩形の窓、明快な水平のコーニス、鋭い稜線が全体を統御する。屋根には青みがかったスレートの急勾配が架けられ、四隅には尖塔を戴く方塔が立つ。この組み合わせは、灰色の石と黒い屋根という抑えた色調とあいまって、荘重で近寄りがたい表情を生んだ。

成立の舞台はフェリペ2世が1563年に起工したエル・エスコリアルである。先行するプラテレスコ様式の繊細な彫刻装飾に対する反動として、また対抗宗教改革期の禁欲的な宗教観の造形として、この語法は急速に規範化した。バリャドリッド大聖堂、セビーリャの商品取引所(現インディアス古文書館)、マドリードのマヨール広場周辺の建築群などに展開し、新大陸のスペイン植民地にも及んでいる。

先行するプラテレスコ、後続するチュリゲラ様式(スペイン・バロック)がいずれも装飾の過剰に傾いたのに対し、エレラ様式はその間にあって装飾の否定を選んだ。様式史のうえでは、イタリア盛期ルネサンスの規範主義がアルプスの西で独自の厳格さへ転じた事例と位置づけられる。

エレラ様式
§1

代表建築

Buildings
§2

様式の系譜

Lineage
親様式
ルネサンス建築
本様式
エレラ様式
隣接する様式