インド石窟建築
エローラ石窟群
インド西部、デカン高原の玄武岩の崖に穿たれた石窟寺院群。6世紀から10世紀にかけ…
インド石窟建築(Indian rock-cut architecture)は、自然の岩盤を掘り抜くことで内部空間と造形を同時に生み出す建築の系譜である。石材を切り出して積み上げる組積造とは逆に、余分な岩を取り去ることだけで建築が成立する。足場も仮枠も要らない代わり、削りすぎれば修正がきかないため、施工は上から下へ、外から内へと厳密な順序で進められた。
紀元前3世紀のマウリヤ朝、バラーバル石窟群に始まり、10世紀ごろまで千二百年余にわたって継続した。中心となったのはデカン高原西部の玄武岩地帯と西インドの断崖で、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教のいずれもがこの技法を用いた。
形態は宗教と時代によって分かれる。仏教では、僧が居住する方形の僧房ヴィハーラと、奥を半円形に納めてストゥーパを安置する礼拝堂チャイティヤの二型式が基本となる。初期の窟は木造建築の垂木や梁を石に写し取った意匠を持ち、失われた木造の姿を間接的に伝えている。ヒンドゥー教窟では中庭を備えた開放的な構成が現れ、後期には岩塊を四方から切り離して独立した堂宇を彫り出す段階に達した。
代表作はアジャンター石窟群、エレファンタ石窟群、そしてエローラ石窟群である。とりわけエローラ第16窟カイラーサナータ寺院は、南インド型の寺院を丸ごと一体彫成した到達点であり、以後この規模の石窟が試みられることはなかった。石窟建築は、南アジアの寺院造営が石造の組積へ移行するなかで役割を終えるが、その平面と装飾の語彙は構造建築へ引き継がれている。