ナショナル・ロマンティック様式
national Romantic style年代
1890 — 1920
地域
北欧(フィンランド・スウェーデン・ノルウェー)
時代
近代モダニズム
ナショナル・ロマンティック様式(ナショナル・ロマンティシズム)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて北欧を中心に展開した建築運動である。フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなどで、国民意識の高まりを背景に、その土地固有の歴史・自然・民俗から建築の言語を引き出そうとした点に特徴がある。とりわけフィンランドでは、ロシア帝国の支配下にあって自立した文化的アイデンティティを模索する動きと結びつき、民族叙事詩『カレワラ』への関心やカレリア地方の木造建築への着目(カレリアニズム)が造形の源泉となった。
様式としては、同時代のアール・ヌーヴォーやユーゲントシュティール、英国のアーツ・アンド・クラフツ運動と響き合いながらも、より土着的で重厚な性格を帯びる。粗く割った花崗岩の野面積みや丸太組を思わせる素材感、中世ロマネスクを想起させる半円アーチや塔、左右非対称の自由な構成、動植物や民話に取材した装飾などが好まれた。建物は周囲の岩盤や森と一体になるよう据えられ、磨き上げられた古典の秩序よりも、素材そのものの質感と物語性が前面に出る。
代表的な担い手には、エリエル・サーリネンやラルス・ソンクらフィンランドの建築家がいる。ソンクが設計したタンペレ大聖堂(旧ヨハネス教会)は、灰色花崗岩の塊量感とロマネスク風の構成によって、この様式の記念碑的な達成を示している。ナショナル・ロマンティシズムは1910年代以降、より簡素で端正な北欧古典主義へと移行していくが、各国が近代国家として自己像を立ち上げる時代に、建築が国民的記憶の器となりうることを示した点で重要な位置を占める。
§1
代表建築
Buildings§2