スウェーデン最北の都市キルナに建つ、同国最大級の木造教会。1909〜1912年にグスタフ・ヴィックマンが設計し、サーミの小屋やノルウェーの木造教会に着想を得た外観をもつ。2025年、鉱山の地盤沈下を避けて約5km移設された。
§1 — 概要概要
キルナ教会(Kiruna kyrka)は、スウェーデン最北部の鉱山都市キルナに建つ教会堂で、同国最大級の木造建築の一つである。1909年から1912年にかけて建築家グスタフ・ヴィックマンが設計し、1912年12月に献堂された。鉱山会社LKABの支援のもとに建てられ、創設者ヤルマール・ルンドボームの意向で、特定の宗派色を抑えた町に開かれた建築として構想された。
歴史
キルナは20世紀初頭、鉄鉱山とともに生まれた計画的な企業都市であり、教会もその一環として町と並行して計画された。建設費の多くはLKABが負担し、祭壇画は画家エウシェン王子の手になる。2001年には、スウェーデンの1950年以前の建築のなかで最も人気のある建物に選ばれている。そして2025年8月、拡大する鉱山による地盤沈下を避けるため、約672トンの建物全体が二日がかりで約5km東へ移送された。この曳家は国内外で大きく報じられた。
建築的特徴
外観はゴシック・リヴァイヴァルを基調としつつ、サーミの伝統的な小屋やノルウェーのスターヴ教会に着想を得た急勾配の屋根をもち、屋根が地面近くまで覆い下りる独特の量塊を示す。壁と屋根は一様な木のシングル葺きで覆われ、両者が連続した表情をつくる。軒には彫刻家クリスティアン・エリクソンによる、十二の感情を表す金色の鋳銅像が並ぶ。内部はナショナル・ロマンティシズムの趣をもち、祭壇画はアール・ヌーヴォーの様式による。
意義・現在
キルナ教会は、土地の自然と先住民サーミの文化、そして近代の鉱業がひとつの木造建築に結ばれた点で、スウェーデンの世紀転換期建築を代表する一作である。鉱山の操業が町そのものの移転を迫るなか、教会の大規模な曳家はその象徴的な出来事となった。移設後も町の精神的な拠り所であり続けている。