タンペレ大聖堂 Tampere Cathedral
フィンランド・タンペレに建つ、ナショナル・ロマンティック様式の大聖堂。建築家ラルス・ソンクの設計により1902年から1907年にかけて建設され、フーゴ・シンベリの象徴主義的なフレスコ画で知られる。
§1 — 概要概要
タンペレ大聖堂は、フィンランド南西部、ピルカンマー県の都市タンペレに建つ福音ルター派の大聖堂である。建築家ラルス・ソンクの設計により1902年から1907年にかけて建設された、フィンランド・ナショナル・ロマンティック様式を代表する建築のひとつである。地元産の灰色花崗岩を用いた重厚な外観と、内部を彩るフーゴ・シンベリの象徴主義的なフレスコ画で広く知られている。
歴史
当初は聖ヨハネ教会として計画され、ソンクがコンペを通じてその設計を得た。1902年に着工し、1907年に完成している。1905年から1906年にかけて画家フーゴ・シンベリが内部のフレスコ画を手がけ、とりわけ天井に描かれた有翼の蛇は、罪や堕落の象徴として当時激しい議論を呼んだ。1923年にタンペレ主教区が置かれると、教会は大聖堂へと格上げされた。19世紀末から20世紀初頭のフィンランドは、ロシア帝国の支配下にあって独自の文化的アイデンティティを模索していた時代であり、この建物もそうした国民意識の高まりのなかで生み出された。
建築的特徴
外観は、粗く仕上げた花崗岩の塊感と中世ロマネスクを思わせる重厚な構成が特徴で、約64メートルの塔が左右非対称のシルエットで立ち上がる。磨き上げられた古典的秩序とは異なる、素材そのものの質感を生かした土着的な造形感覚が前面に出ている。内部はシンベリの壁画で彩られ、祭壇脇には《傷ついた天使》と《死の庭》が描かれ、ギャラリーの手摺沿いには薔薇の花綱を担ぐ少年たちの姿が連なる。祭壇画はマグヌス・エンケルの筆による。
意義・現在
タンペレ大聖堂は、ソンクの花崗岩建築とシンベリの象徴主義絵画の融合として、フィンランド美術史において重要な位置を占めている。建築と美術が国民的感性をいかに表現したかを示す記念碑であり、今日も主教座聖堂として礼拝に用いられるとともに、国家的に重要な文化環境(RKY)として保護されている。