311サウスワッカードライブ 311 South Wacker Drive
シカゴのループ地区に立つ65階建ての超高層ビル。コーン・ペダーセン・フォックスの設計により1988年に着工し1990年に完成、当時としては世界一の高さを誇る鉄筋コンクリート造の建築であった。
§1 — 概要概要
311サウスワッカードライブ(311 South Wacker Drive)は、アメリカ・シカゴのループ地区、ワッカードライブ沿いに立つ高さ約293メートル、65階建ての超高層オフィスビルである。設計事務所コーン・ペダーセン・フォックス(KPF)の手になるポストモダン建築で、夜間に光を放つ円筒形の頂部によって、シカゴのスカイラインのなかでもひときわ目を引く存在となっている。
歴史
計画は1980年代後半の好況を背景に立ち上がり、当初はこの街区に同規模の塔を三棟並べる構想であった。1988年10月に起工し、1989年に構造体が頂部に達し、1990年に竣工して開業した。しかし1990年代初頭の不況とオフィス需要の冷え込みにより、残る二棟は建設されず、計画は一棟のみで終わった。完成時、本建築は世界で最も高い鉄筋コンクリート造の建築であり、また街路の住所のみで呼ばれる建築としては世界一の高さでもあった。後者の記録は2015年にニューヨークの432パーク・アヴェニューに抜かれるまで保たれた。
建築的特徴
平面は六角形を基本とし、構造はすべて鉄筋コンクリートによる。薔薇色の花崗岩とガラスで覆われた外壁は、上方に向かって段状に後退するセットバックを重ね、頂部は高さ30メートルを超える半透明の円筒と、それを囲む四基の小円筒へと収束する。この頂部の構成はシカゴのトリビューン・タワーの量塊に着想を得たもので、夜には内部から照らされ、祝祭や記念日には色を変える。低層部には高さ26メートルに及ぶガラス天井の吹き抜け「ウィンターガーデン」が設けられ、公共に開かれたロビーをなしている。
意義・現在
311サウスワッカードライブは、装飾を排した近代の摩天楼に対し、過去の様式の記憶と都市的な文脈を取り戻そうとしたポストモダンの志向を、鉄筋コンクリートという技術の極限とともに体現した建築である。光る冠を戴くその姿は、20世紀末のシカゴが摩天楼の街としての伝統を新たな造形へと更新したことを示している。完成から30年あまりを経た今も、ループ地区を代表するオフィスビルの一つとして用いられている。