ミュンヘンに建つ世界最古級の絵画館。レオ・フォン・クレンツェの設計により1836年に開館し、天窓採光やネオ・ルネサンス様式で後の美術館建築の規範となった。
§1 — 概要概要
アルテ・ピナコテークは、ドイツ・ミュンヘンの美術館街クンストアレアールに建つ絵画館である。14世紀から18世紀に至る西洋古典絵画(オールド・マスター)の名品を収め、ルーベンスやデューラー、レンブラントらの作品で名高い。世界でも最古級の公開美術館の一つに数えられ、バイエルン州立絵画コレクションを構成する中核館である。
歴史
バイエルン王ルートヴィヒ1世が、ヴィッテルスバッハ家伝来の絵画コレクションを公開するため、1826年に建築家レオ・フォン・クレンツェへ新館の建設を命じた。工事は1826年から1836年まで続き、同年に開館した。第二次世界大戦で大きく損壊したが、戦後の1952年から1957年にかけて建築家ハンス・デルガストにより修復され、戦災の痕跡をあえて残した再建として知られる。
建築的特徴
城館風の重厚な美術館が一般的だった当時にあって、クレンツェはネオ・ルネサンス様式の端正な外観を与えた。とりわけ、上階の展示室に天窓を設けて自然光を採り入れる構成は画期的で、絵画を鑑賞するための空間として高く評価された。全長150メートルに及ぶ細長い平面に、明快な動線で展示室を連ねている。
意義・現在
開館当時のアルテ・ピナコテークは世界最大の美術館であり、その合理的な構成は以後の美術館建築の規範となった。サンクトペテルブルクのエルミタージュをはじめ、ローマやブリュッセル、カッセルの美術館がこれを手本としたと伝えられる。絵画展示に特化した近代的美術館建築の原型として位置づけられる。また、戦災の傷を覆い隠さずに再生したデルガストの修復は、戦後の建築保存をめぐる議論にも一石を投じた仕事として、今日改めて評価されている。