アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum
オランダの国立美術館。建築家ピエール・コイペルスの設計で1885年に開館した、ゴシックとルネサンスのリヴァイヴァルを折衷した煉瓦造の殿堂。レンブラントの《夜警》を収め、建物自体がオランダの歴史を物語る記念碑である。
§1 — 概要概要
オランダの国立美術館で、アムステルダム南部のミュージアム広場(museumplein)に建つ。現在の建物は建築家ピエール・コイペルス(Pierre Cuypers)の設計により1885年に開館した。美術館そのものは18世紀末にハーグで創設され、のちアムステルダムへ移って各所を転々としたのち、この専用館に落ち着いた。ゴシックとルネサンスのリヴァイヴァルを折衷した煉瓦造の壮麗な殿堂で、外観も内部もオランダの歴史と美術を物語る装飾で覆われている。レンブラントの《夜警》やフェルメール、フランス・ハルスらオランダ黄金時代の名画を収め、建物そのものが国の物語を語る記念碑となっている。
歴史
国立美術館は1798年にハーグで創設され、1808年にアムステルダムへ移されて王宮、ついでトリップ邸に置かれた。やがて収蔵品にふさわしい専用館が求められ、1876年のコンペでピエール・コイペルスが満場一致で設計者に選ばれる。同年10月に着工し、1885年7月13日に開館した。外装・内装の豊かな装飾は別途コンペで担い手が選ばれ、彫刻、タイル画、ステンドグラスが、オランダ美術史の場面を語るように配された。
もっとも、その重厚で大聖堂を思わせる意匠は、カトリックの建築家コイペルスによるものだけに、プロテスタントの国の国立美術館にはふさわしくないとして批判も招いた。1970年にはオランダの国定記念物(rijksmonument)に指定されている。2003年から2013年にかけては、スペインの建築家クルス・イ・オルティス(Cruz y Ortiz)の設計で約3億7,500万ユーロを投じた大規模修復が行われ、後年に覆い隠されていたコイペルスの装飾が復元され、展示も年代順に再編された。再開館の式は2013年、ベアトリクス女王によって執り行われた。
建築的特徴
赤煉瓦と切石を主とし、ゴシックとルネサンスのリヴァイヴァルを混ぜ合わせた様式——コイペルス自身は「ゴシックからルネサンスへの過渡期」の建築と説いた——をとる。左右対称のファサードには、中世の市門を思わせる双塔が立ち、アーチ窓や数多の彫刻、寓意像、紋章が、オランダの歴史と美術を物語る。平面は二つの中庭を抱き、地上階には建物を貫く通路(パサージュ)が設けられて、自転車や歩行者が美術館の内を通り抜けられる——美術館を都市の日常に編み込む仕掛けである。中央の名誉の間(エレハレイ)は、教会堂の身廊のように《夜警》へと視線を導く。展示室では煉瓦とともに鉄が大胆に用いられ、上方から自然光を採り入れている。建築と彫刻・工芸を一体とするゲザムトクンストヴェルクの理想が、隅々にまで貫かれた建築である。
意義・現在
アムステルダム国立美術館は、国民国家の自意識が高まった19世紀の歴史主義を体現する記念碑であり、建物それ自体がオランダという国の物語を語る。同じコイペルスが手がけた中央駅とともに、その折衷的な意匠は今日のアムステルダムの象徴的な風景をかたちづくった。2003年からの修復は、失われていた多彩な装飾を蘇らせるとともに、歴史的な建築と現代の美術館機能とを橋渡しした。オランダ最大の美術館であり、年間200万を超える人々が、この建物のなかでレンブラントらの傑作に出会っている。