アメリカ自然史博物館 American Museum of Natural History
ニューヨーク・マンハッタンに建つ世界有数の自然史博物館。複数の建築家による歴史主義の諸棟と現代的な増築が一体となった巨大な複合建築である。
§1 — 概要概要
アメリカ自然史博物館は、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタンのアッパー・ウエスト・サイド、セントラル・パークの西側に建つ世界最大級の自然史博物館である。1869年に学術機関として設立され、以後一世紀半にわたって増改築を重ねた結果、ヴィクトリアン・ゴシックからロマネスク・リヴァイヴァル、ボザール様式に至る歴史主義の諸棟と、ガラス張りの現代建築とが一体をなす広大な複合体となった。古生物学の標本群やプラネタリウムで知られ、研究と公教育の両面で重要な役割を担う。
歴史
博物館は1869年に設立され、建築としては1874年に礎石が据えられ、1877年に最初の建物が開館した。当初の棟はカルヴァート・ヴォークスとジェイコブ・レイ・モールドによるヴィクトリアン・ゴシック様式であった。1890年代にはJ・クリーヴランド・ケイディが77丁目側に長大なロマネスク・リヴァイヴァルの正面を加え、初期の校舎を覆い隠した。さらに1936年には、ジョン・ラッセル・ポープがセントラル・パーク・ウエスト側に壮大なボザール様式の主入口「セオドア・ローズヴェルト記念館」を完成させ、歴史主義による一連の建設に区切りをつけた。2000年にはジェームス・ポルシェックによるローズ地球宇宙センターが、2023年にはギルダー・センターが加わっている。
建築的特徴
博物館は時代ごとに異なる様式の棟が連結した、いわば建築の博物館でもある。77丁目側のケイディによる正面は、粗面の褐色砂岩で全長約210メートルにわたって展開し、隅に塔を備えた重厚なロマネスク・リヴァイヴァルの構えを見せる。内部の一部には、ラファエル・グアスタビーノによる薄いタイル積みのグアスタヴィノ・タイルの天井が用いられ、軽量で耐火性に富む優美な構造を実現している。ローズ地球宇宙センターでは、透明なガラスの立方体のなかに球形のプラネタリウムである大ドームが浮かび、歴史主義の旧館と鮮やかな対比をなす。
意義・現在
アメリカ自然史博物館は、複数世代の建築家による様式の累積を通じて、アメリカにおける博物館建築と歴史主義の展開を読み取ることのできる貴重な事例である。国家歴史登録財およびニューヨーク市指定ランドマークとして保護され、膨大な標本と研究機能を擁する世界的な学術拠点でもある。歴史的な諸棟と現代的な増築が共存するその姿は、保存と更新をいかに両立させるかという現代的な課題への一つの応答ともなっている。