アルメニア南部、アララト山を望む平原に建つ修道院。聖グリゴル・ルサヴォリチが…
トルコ東部、ヴァン湖のアクダマル島に建つ中世アルメニアの聖堂。921年、ヴァスプラカン王ガギク1世のために修道僧マヌエルが薔薇色の凝灰岩で建て、外壁を覆う聖書場面の浮彫で名高い。
§1 — 概要聖十字大聖堂(アルメニア語: Սուրբ Խաչ եկեղեցի)は、トルコ東部ヴァン湖に浮かぶアクダマル(アグタマル)島に建つ、中世アルメニア使徒教会の聖堂である。ヴァスプラカン王国の王の宮廷礼拝堂として築かれ、のちにアグタマル・カトリコス座の中心となった。外壁一面に彫られた浮彫の連作で、中世アルメニア建築を代表する作例として知られる。
ヴァスプラカン王国のガギク1世アルツルニ(在位908–943/944年)は、アクダマル島を居所の一つに選び、集落を営んだ。当時の建物で現存するのはこの聖堂のみである。聖堂は修道僧にして建築家のマヌエルにより、915年から921年にかけて薔薇色の火山性凝灰岩で建てられた。1116年から1895年まで、島はアグタマル・カトリコス座の所在地であった。1915年のアルメニア人虐殺に際して聖堂は略奪され、付属の修道院群は破壊されて、翌1916年にはカトリコス座も廃された。その後は長く打ち捨てられ、1951年には取り壊しが計画されたが、作家ヤシャル・ケマルらの働きかけで難を逃れた。2005年から2006年にかけてトルコ政府により大規模な修復が行われ、2007年に博物館として再開された。
平面は、7世紀のエチミアジンの聖フリプシメ教会などに代表される、アルメニアで数世紀前に確立した集中式の形式に基づく。内部は約14.8メートル×11.5メートル、ドームは地上約20.4メートルに達する。最大の特色は、外壁を帯状に巡る浮彫である。アダムとエヴァや楽園、ダヴィデとゴリアテといった聖書の場面が、フレスコやモザイクではなく石の高浮彫として刻まれる。葡萄や狩猟の図、ターバンを巻いた人物像などには、ウマイヤ朝の美術やササン朝の図像との関わりも指摘される。境内には14世紀以降のハチュカル(十字架石碑)も伝わっていた。
聖十字大聖堂は、中世アルメニアの王権と信仰、そして石彫の到達点を今に伝える稀有な建築である。20世紀の荒廃と毀損を経たのち博物館として整備され、2010年以降は年に一度のアルメニア教会の典礼も認められている。アルメニアとトルコの歴史が交差する場として、トルコの世界遺産暫定リストにも記載されている。