名築が収録する公開済みの建物のうち、ロンドン地下鉄の駅は9件、モスクワ地下鉄の駅は35件ある。ロンドンの7件はチャールズ・ホールデンが1926年から1947年に…
モスクワ地下鉄ザモスクヴォレツカヤ線の駅。第二次世界大戦さなかの1943年にアレクセイ・ドゥシュキンの設計で開業し、大祖国戦争を主題とするモザイクで内部を飾る、スターリン様式の代表的な地下駅である。
§1 — 概要アフトザヴォーツカヤ駅(Автозаводская)は、ロシアの首都モスクワを走るモスクワ地下鉄ザモスクヴォレツカヤ線(緑の2号線)の駅である。第二次世界大戦のさなか、ドイツとの激戦が続く1943年に開業した。設計を手がけたのは、地下鉄建築の名手として知られるアレクセイ・ドゥシュキンである。戦時下に建設されながら、ピンク色の大理石と戦争を主題とするモザイクで荘厳に飾られた空間は、ソビエト地下鉄の「地下宮殿」と呼ばれる豪奢な様式を体現している。
駅は1943年1月、大祖国戦争(独ソ戦)のただ中に開業した。物資も人手も乏しい戦時にあって、これほど装飾豊かな地下駅が建設されたこと自体、地下鉄を国家の威信の象徴とみなす当時の方針を物語っている。開業時の駅名は近隣の自動車工場にちなむもので、当初は指導者の名を冠した名称で呼ばれていた。1956年、スターリン批判にともなう非スターリン化の流れのなかで、現在のアフトザヴォーツカヤ(「自動車工場の」の意)へと改称された。開業から1969年までは、路線の南の終着駅として機能していた。
ホームはピンク色を帯びた大理石の列柱で構成され、温かみのある色調が空間を満たす。壁面には、戦時の労働や戦闘を主題とする8面のスマルト・モザイクが掲げられている。スマルトとは色ガラスを焼いて作るモザイク用の小片で、深く澄んだ発色を特徴とする。これらの図像は、銃後の生産に励む人々や前線の兵士を描き、戦時下に開業した駅にふさわしい主題をまとっている。装飾と構造が一体となった重厚な空間は、ドゥシュキンの設計思想をよく示している。
アフトザヴォーツカヤ駅は、ソビエト時代の地下鉄建築のなかでも、戦時に完成した装飾駅として特筆される。困難な状況下でなお芸術性を追求した点で、当時の地下鉄計画の理念を象徴する存在である。ホームと地上の駅舎は、ロシアの地域的意義をもつ文化遺産に指定されている。今日も現役の駅として多くの乗客に利用されており、その豊かなモザイクと大理石の列柱は、モスクワ地下鉄を巡る人々の目を引きつづけている。
名築が収録する公開済みの建物のうち、ロンドン地下鉄の駅は9件、モスクワ地下鉄の駅は35件ある。ロンドンの7件はチャールズ・ホールデンが1926年から1947年に…