ボーヴェ大聖堂 Beauvais Cathedral
フランス北部ボーヴェのカトリック大聖堂。世界最高の48.5mのゴシック内陣ヴォールトをもつが、二度の崩落により身廊を欠いたまま未完に終わった、ゴシックの野心の極北。
§1 — 概要概要
ボーヴェ大聖堂(Cathédrale Saint-Pierre de Beauvais)は、フランス北部オワーズ県ボーヴェに建つカトリックの司教座聖堂である。世界で最も高い48.5mのゴシック内陣ヴォールトをもつことで知られ、同時に二度の崩落を経て身廊を欠いたまま未完に終わった、ゴシック建築の野心とその限界を体現する記念碑として名高い。
歴史
建設は1225年、内陣(聖歌隊席)の着工に始まる。設計者たちは、アミアンやパリのノートルダムをしのぐフランス最大のゴシック大聖堂を志した。しかし1284年、完成して間もない内陣のヴォールトが崩落する。原因は支柱の間隔を広げすぎた構造的な無理にあったとされ、以後は柱を増やして補強しながらの再建となった。16世紀にはフランボワイヤン式の交差部(トランセプト)が建築家マルタン・シャンビージュらによって加えられ、その上に高い尖塔が組み上げられた。1569年から1573年にかけて、この塔は高さ153mに達し、当時世界で最も高い人工の建造物となったが、1573年に崩落する。資金と技術の限界から身廊はついに着工されず、大聖堂は内陣と交差部のみを残して今日に至る。身廊が建つはずだった場所には、10世紀のロマネスク聖堂「バス・ウーヴル(下の建物)」がなお残っている。
建築的特徴
内陣はレイヨナン式ゴシックの透徹した骨組みをもち、尖頭アーチ・リブ・ヴォールト・飛梁によって荷重を外へ逃がし、壁面を限界まで開いて高さと光を追求した。その極限の挑戦が、皮肉にも崩落を招いた。16世紀の交差部正面は、火炎のように波打つトレーサリーで飾るフランボワイヤン式の装飾性を示し、二つの時代の様式が一棟のうちに同居する。
意義・現在
ボーヴェ大聖堂は、「より高く」を競ったゴシック建築の到達点であり、同時にその物理的な限界を示す建築でもある。未完のまま立ち続けるその姿は、技術的野心の記念碑として、また構造工学の教訓として、今日も多くの建築家・技術者の関心を引いている。現在もたびたび補強が施され、傾きや変形への対策が続けられている。1840年からフランスの歴史的記念物に登録されている。