ベルリン北西部にあった国際空港。1974年開業の六角形ターミナルは、車を降りてから搭乗口まで最短30メートルという「ドライブイン空港」の発想で知られる。2020年に運用を終えた。
§1 — 概要概要
ベルリン・テーゲル空港(Flughafen Berlin-Tegel)は、ドイツ・ベルリン北西部のライニッケンドルフに位置した国際空港である。冷戦期には西ベルリンの主要な玄関口として機能し、再統一後も2020年まで同市最大の空港であり続けた。正式名称は航空の先駆者オットー・リリエンタールにちなむ。その名を世界に知らしめたのは、利用者の動線を極限まで切り詰めた六角形のターミナルAであった。
歴史
テーゲルの地は20世紀初頭から飛行の実験場として使われ、第二次世界大戦で荒廃したのち、1948年のベルリン封鎖・空輸作戦のさなかにフランス占領軍がわずか数か月で飛行場を整備した。ジェット機時代に入ると手狭なテンペルホーフに代わる新ターミナルが求められ、1965年の設計競技で、ハンブルクの若い建築家集団フォン・ゲルカン・マルク・アンド・パートナーズ(gmp)の案が選ばれた。1969年に起工、1974年に開業し、以後テーゲルは西ベルリンの主要空港となった。再統一後は利用が急増して恒常的な過密に陥り、新設のベルリン・ブランデンブルク空港への移管にともない、2020年11月8日の最終便をもって運用を終えた。
建築的特徴
設計の核心は、自動車・タクシー・バスを建物の中心まで引き込み、搭乗者を空港の縁から直接ゲートへ送り込むという「ドライブイン」の発想にある。平面は閉じた六角形の環で、外周にゲートを並べ、内側に車路と短時間駐車場を抱き込む。これにより車を降りてから搭乗口までの距離はわずか30メートルほどに抑えられた。構造体には打放しコンクリートがそのまま現され、赤いラインと相まって、機能から導かれた即物的で力強い表情をつくる。設計は正方形の格子ではなく一辺10メートルの正三角形のタイル割りを基礎としており、六角形はその幾何学から自然に導かれている。
意義・現在
テーゲルの六角形は、空港建築が巨大化・複雑化していく時代にあって、人間の歩く速度に寄り添う設計がなお可能であることを示した稀有な事例である。動線の短さは多くの利用者に愛され、閉鎖に際しては存続を求める声も大きかった。gmpはこの作品で国際的評価を得て、のちにベルリン中央駅などを手がける大事務所へと成長した。運用終了後もターミナルは解体されず保存され、工科系大学のキャンパスを核とする研究・産業団地「ベルリンTXL」へと転用されつつある。