コソボ国立図書館 National Library of Kosovo
コソボの首都プリシュティナに建つ、ブルータリズムの国立図書館。クロアチアの建築家アンドリヤ・ムトニャコヴィッチが設計し、1971年から1982年にかけて建設された。大小99個のドームと、建物全体を覆う金属の網が特徴で、ビザンティンとオスマンの伝統を近代の素材で翻案している。
§1 — 概要概要
コソボ国立図書館(正式名称はコソボ国立大学図書館「ペテル・ボグダニ」)は、コソボの首都プリシュティナに建つ図書館である。クロアチアの建築家アンドリヤ・ムトニャコヴィッチが設計し、1971年から1982年にかけて建てられた。大小99個のドームと、建物の外皮全体を覆う金属の網という異形の外観で知られる。世界で最も醜い建物の一つに挙げられる一方、後期ユーゴスラヴィアのモダニズムを代表する作品としても高く評価される。
歴史
図書館組織そのものは1944年、コソボ南部のプリズレンで設立された。現在の建物はそれより新しく、プリシュティナ大学の整備にあわせて計画され、ユーゴスラヴィア連邦内でコソボが自治権を強めた時期に建設された。1982年に開館したが、その特異な外観は当初から賛否を呼んだ。1990年代、コソボの自治が停止されると図書館はアルバニア系住民の利用を阻まれ、紛争期にはユーゴスラヴィア軍の拠点として使われて、多くのアルバニア語蔵書が失われた。1999年の紛争終結後に復旧が進み、ふたたび国の中心的な図書館として機能している。
建築的特徴
設計者ムトニャコヴィッチは、この地に根ざすビザンティンとオスマンの建築から「立方体」と「ドーム」という二つの要素を抜き出し、それを反復・変化させることで全体を組み立てた。大小さまざまな立方体の上に白いドームが載り、内部はひと続きの大広間ではなく、ドームに覆われた小さな空間の集合となっている。読書する者がより親密な場で集中できるように、という考えに基づく構成である。建物全体を覆うアルミニウムの網は、強い日射を和らげる日除けであると同時に、コソボの金線細工の伝統を思わせる装飾でもある。現場打ちの打放しコンクリート、大理石、白い漆喰で仕上げられた構造は、古い形を借りながらも紛れもなく近代の建築であった。
意義・現在
この図書館は、国際様式の均質さに抗い、地域の歴史と素材から固有の表現を引き出そうとする試みの一例である。多民族が暮らす土地にあって、ビザンティンとオスマンに共通する立方体とドームを選んだことには、異なる文化を束ねる象徴という願いも込められていた。賛否の絶えない外観は、いまでは街のかけがえのない風景となり、近年は再評価が進んでいる。