ドイツ・ミュンヘンに建つ自動車メーカーBMWの本社ビル。四つの円筒を束ねた「四気筒(フィアツィリンダー)」の形で知られ、カール・シュワンツァーの設計により1972年に完成した。円筒を中央の芯から吊り下げる構造をもつモダニズムの象徴的建築である。
§1 — 概要概要
BMW本社ビル(BMW-Vierzylinder、通称「四気筒=フィアツィリンダー」)は、ドイツ南部バイエルン州の州都ミュンヘンに建つ高層ビルである。自動車メーカーBMWの世界本社として1973年から使われており、四つの円筒を十字形に寄せ集めたその姿は、自動車エンジンの四気筒になぞらえて名づけられた。オーストリアの建築家カール・シュワンツァーの設計になり、隣接する円盤状のBMW博物館とともに、ミュンヘンを代表するモダニズム建築として広く知られる。
歴史
1960年代、事業の急成長により手狭となった管理部門のために、BMWは新社屋の建設を計画した。1968年の設計競技を経て、同年末にシュワンツァーの案が採用された。1970年7月に着工し、1971年末に上棟、1972年夏には外観が完成した。これは、同年ミュンヘンで開かれたオリンピックに間に合わせることを目指した工程であった。社員の入居と公式の落成は翌1973年で、以後BMWの本社機能を担っている。1999年には文化財(記念物)に指定され、2004年から2006年にかけて大規模な改修が行われた。
建築的特徴
最大の特徴は、四つの円筒が地面から立ち上がるのではなく、中央の鉄筋コンクリート製の芯から張り出したカンチレバー(片持ち梁)に吊り下げられている点にある。このため建設は上から下へと進み、頂部の階を先につくり、地上で組み立てた円筒を油圧で押し上げながら継ぎ足していく特異な工法がとられた。高さは約101メートル、直径52メートルで、二層の地下を含めて22層からなる。外装には日本のアルミ鋳造技術を用いた成形パネルが採用され、当時のヨーロッパでは新しい試みであった。
意義・現在
BMW本社ビルは、企業の理念を建築の形そのもので語ろうとした、戦後モダニズムを代表する象徴的建築である。シュワンツァーの師にあたるオスカー・ニーマイヤーの彫塑的な造形の影響もうかがえる。当初は屋上への社章の掲出をめぐって市と争うなど話題を呼んだが、今日ではミュンヘンの景観に不可欠なランドマークとして定着し、文化財として保存されている。隣接するBMW博物館・BMWヴェルトとともに、多くの来訪者を集めている。