イェシル・ジャーミィ Bursa Green Mosque
トルコ・ブルサに建つオスマン朝初期のモスク。1412年に着工し1419年に主要部が完成した、メフメト1世建立の複合施設の中心で、緑と青のタイル装飾から「緑のモスク」と呼ばれる。
§1 — 概要概要
イェシル・ジャーミィ(Yeşil Camii、「緑のモスク」)は、トルコ北西部ブルサに建つオスマン朝初期のモスクである。コンスタンティノープル征服以前、オスマン帝国の首都であったブルサに、第5代スルタン・メフメト1世が建立した複合施設(キュッリイェ)の中心を成す。モスクのほか、霊廟「緑の廟(イェシル・テュルベ)」、マドラサ、施療院、浴場からなる。名は、内部を覆う緑と青を基調としたタイル装飾に由来する。
歴史
モスクは、兄弟との抗争を制して帝国を再統一したメフメト1世(在位1413〜1421年)の命により建立された。建設は1412年に始まり、入口上部の銘文によれば1419年末から1420年初頭にかけて主要部が完成した。施工を監督したのは、メフメト1世の将であり芸術の庇護者でもあった宰相ハジュ・イヴァズ・パシャである。メフメト1世の没後、その子ムラト2世によって複合施設内に緑の廟が築かれ、1421年に完成した。タイルや装飾はその後も続けられ、1424年に「タブリーズの巨匠たち」と称される職人集団の手で完成をみた。
建築的特徴
建物は、中央の二つのドーム空間を軸線上に並べ、その左右に小室を配する「逆T字型」あるいは「ブルサ型」と呼ばれる平面をとる。これは初期オスマン建築に特徴的な形式で、本作はその完成形とされる。内部は、礼拝の方角を示すミフラーブやスルタンのための桟敷を含め、緑・青・黄を基調とする色鮮やかなタイルで覆われる。これらのタイルには、イランのタブリーズからもたらされたティムール朝の影響がうかがえ、立体的なムカルナスの装飾とともに、当時の最高水準の工芸を伝えている。
意義・現在
イェシル・ジャーミィは、初期オスマン建築の到達点として、美的にも技術的にも高い達成を示す作例と評価されている。装飾を担った工人の名が銘文に記される点でも珍しく、建築と工芸が一体となった当時の制作のありようを今に伝える。モスクは2014年にユネスコ世界遺産「ブルサとジュマルクズク:オスマン帝国誕生の地」の構成資産として登録され、現在も礼拝の場として用いられている。