カナダ、トロントに建つゴシック・リヴァイヴァルの城館風大邸宅。実業家サー・ヘンリー・ペラットの居館として、E・J・レノックスの設計により1911年に着工し、1914年に完成した。
§1 — 概要概要
カナダ・オンタリオ州トロントの市街に建つ、ゴシック・リヴァイヴァル様式の城館風大邸宅である。実業家サー・ヘンリー・ペラットの居館として、建築家E・J・レノックスの設計により1911年から1914年にかけて建てられた。完成当時はカナダ最大の個人邸宅であり、現在は歴史的建造物として一般に公開されている。
歴史
金融業で財を成したヘンリー・ペラットは、1903年にトロント北郊の高台に用地を取得し、E・J・レノックスにカサ・ロマの設計を委ねた。建設は1911年、まず厩舎や狩猟小屋から着手され、ついで主館の工事が進められた。総工費は約350万ドル、およそ300人の職人が三年を費やしたとされ、98の部屋を擁する壮大な邸宅となった。しかし第一次世界大戦の勃発により工事は中断され、プールやボウリング場など一部の設備は未完のまま残された。戦後の不況下でトロント市が固定資産税を大幅に引き上げると、すでに資金繰りに窮していたペラットは美術品や調度を競売にかけ、十年と経たぬうちにこの館を手放すこととなった。のちに市の所有を経て、博物館として整備された。
建築的特徴
中世ヨーロッパの城を範とするロマン主義的な構成をとり、塔や小塔、胸壁、尖頭アーチなど、ゴシック・リヴァイヴァルの語彙を豊かに用いる。意匠はスコットランドやノルマンの城郭を折衷したもので、レノックスの自在な様式操作がうかがえる。一方、内部にはエレベーターや集中吸塵装置といった当時最新の設備が組み込まれ、中世風の外観と近代の生活機能とが同居している点に特色がある。
意義・現在
カサ・ロマは、20世紀初頭の北米における産業資本の隆盛と、歴史主義建築の一つの到達点を体現する存在である。トロントを代表する観光名所であり、博物館として公開されるほか、映画やテレビの撮影地としても広く知られている。