カサ・ミラ Casa Milà
バルセロナ、グラシア通りに建つガウディ最後の住宅作品。波打つ石灰岩の外壁と彫刻的な屋上で知られるモデルニスモの傑作で、「ラ・ペドレラ」と呼ばれる。
§1 — 概要概要
カサ・ミラ(Casa Milà)は、スペイン・バルセロナのアシャンプラ地区、グラシア通りに建つ集合住宅である。実業家ペレ・ミラ夫妻の依頼でアントニ・ガウディが設計し、1906年から1912年にかけて建てられた。うねるように波打つ石灰岩の外壁から「ラ・ペドレラ(石切り場)」の愛称で呼ばれ、ガウディが手がけた最後の住宅作品として知られる。
歴史
ミラ夫妻は1906年、自らは主階に住み、ほかの住戸を賃貸に供する計画でガウディに新居を委ねた。工事は既存建物を取り壊して始まり、1910年末にはおおむね完成、夫妻は1911年に入居した。設計者の証明によって全体が完成と認められたのは1912年である。あまりに型破りな外観は当時の市民の不評を買い、風刺画では飛行船の格納庫などと揶揄された。市当局とは規定の超過をめぐって対立し、罰金も科された。長く荒廃した時期を経て、1986年に取得・修復が進み、現在はラ・ペドレラ財団が管理している。
建築的特徴
最大の特徴は、構造を支えない自立式の石の外壁である。建物の荷重は鉄骨と柱が受け持つため、内部に耐力壁がなく、住戸の間取りを自由に変えられる自由平面が成立した。これは後年カーテンウォールとして一般化する考え方を、手刻みの石で先取りしたものといえる。錬鉄製のバルコニー手すりは、協働者ジュゼップ・マリア・ジュジョールが廃材を生かして造形した。屋根裏では約270のカテナリーアーチが柱なしで屋根を支え、屋上には兵士の兜を思わせる彫刻的な煙突群が並ぶ。直線を避け、自然の曲線に倣う設計思想が全体に貫かれている。
意義・現在
カサ・ミラは、装飾と構造を一体に捉えるガウディの到達点であり、住宅建築に彫刻的な造形をもたらした記念碑である。完成当初は嘲笑の的だった愛称「ラ・ペドレラ」は、今や敬意を込めた呼び名へと転じた。1984年にはガウディの一連の作品の一部としてユネスコの世界遺産に登録され、現在も一部は住居として使われながら、文化施設・展示空間として年間百万人を超える来訪者を迎えている。