カタルーニャ音楽堂 Palau de la Música Catalana
バルセロナ旧市街に立つ演奏会堂。合唱協会オルフェオ・カタラのために、リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーが設計したカタルーニャ・モデルニスモの代表作で、鉄骨と色ガラスによる光の空間を実現した。1997年にユネスコ世界遺産に登録。
§1 — 概要概要
カタルーニャ音楽堂(Palau de la Música Catalana)は、バルセロナ旧市街のサン・ペレ地区に立つ演奏会堂である。カタルーニャ語の合唱を振興する市民団体オルフェオ・カタラ(Orfeó Català、1891年創設)の本拠として、建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネー(Lluís Domènech i Montaner)の設計により1905年から1908年にかけて建てられた。19世紀末から20世紀初頭にカタルーニャで花開いたモデルニスモを、装飾と構造の両面で体現した建築として知られる。
歴史
着工は1905年、竣工は1908年で、同年2月9日に開館した。建設資金の多くはオルフェオ・カタラ自身が負担し、バルセロナの実業家や市民の寄付がこれを支えた。狭い街区の制約のなかで、ドメネクは内部を可能なかぎり明るく開くことを設計の課題とした。完成した建物は翌1909年にバルセロナ市の最優秀建築賞を受け、設計者の名声を決定づけている。1982年から1989年にかけて建築家オスカル・トゥスケッツとカルレス・ディアスの指揮で大規模な修復・増築が行われ、隣接地を取り込んで動線と設備が整えられた。
建築的特徴
構造の要は鉄骨である。ドメネクは荷重を鉄骨フレームに負わせることで外周の壁を構造から解放し、壁面の大半を色ガラスに置き換えた。これにより、外光が室内へ直接差し込む稀有な演奏会堂が生まれている。中央天井からは逆さの太陽を思わせる球状のステンドグラスの天窓が下がり、昼の公演では自然光が降りそそぐ。室内はモザイク、彩釉タイルのトレンカディス、彫刻、鉄細工が渾然と組み合わされ、舞台奥には楽器を奏でる女性像の半立体装飾が並ぶ。植物文様と色彩を全面に展開する手法は、工芸を建築へ統合したカタルーニャ・モデルニスモの到達点といえる。
意義・現在
過剰な装飾として退けられがちなモデルニスモにおいて、本建築は装飾が構造・採光と一体に構想された点で際立つ。現在もオルフェオ・カタラの本拠であり、合唱やクラシックを中心とする演奏会場として使われ続けている。1997年、近接するドメネク設計のサン・パウ病院とともに「カタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院」としてユネスコ世界遺産に登録された。ガウディの諸作と並ぶ、バルセロナのモデルニスモ建築を代表する建物である。