チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅 Chhatrapati Shivaji Maharaj Terminus
インド・ムンバイの鉄道ターミナル。旧称ヴィクトリア・ターミナス。1888年完成、F・W・スティーヴンスの設計で、ヴィクトリアン・ゴシックにインドの伝統意匠を融合させた。2004年ユネスコ世界遺産。現役の駅でもある。
§1 — 概要概要
チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は、インド・ムンバイに立つ鉄道ターミナルである。英領時代の1888年に「ヴィクトリア・ターミナス」として完成し、英国人建築家フレデリック・ウィリアム・スティーヴンスが設計した。ヴィクトリア朝のゴシック・リヴァイヴァルにインドの伝統意匠を織り込んだ壮麗な駅舎で、2004年にユネスコ世界遺産に登録された。
歴史
グレート・インディアン・ペニンシュラ鉄道の拠点として、1878年に建設が始まった。設計にあたっては、スウェーデン出身の画家アクセル・ハイグが描いた水彩の透視図が高く評価され、これをもとにスティーヴンスが実施設計を進めた。工事は約10年を要し、ヴィクトリア女王即位50年(ゴールデン・ジュビリー)にあたる1887年に営業を開始、1888年に竣工して女王の名を冠した。インド独立後の1996年、マラーター王国の創建者シヴァージーにちなんで改称され、2017年に現在の名称となった。今日もインド国鉄中央鉄道の本社と、近郊・長距離列車の発着駅を兼ねる。
建築的特徴
駅舎はヴィクトリア朝のゴシック・リヴァイヴァルを基調としつつ、ムガル建築の意匠を取り込んだ折衷的な様式をとる。先の尖った尖頭アーチや円形のバラ窓、小塔や破風、怪獣をかたどった彫刻がゴシックの語彙を伝える一方、玉ねぎ形のドームや色石による装飾はインドの伝統に通じる。中央には石造の大ドームが載り、その頂に「進歩」を象徴する女性像が立つ。石造ドームをヴィクトリアン・ゴシックに用いた早い例とされ、内外を彩る彫刻や鉄・真鍮の装飾は地元の美術学校の関与のもとに制作された。
意義・現在
ヴィクトリア・ターミナスは、19世紀の英国がインドで展開した「インド・サラセン様式」を代表する建築であり、植民地都市ボンベイ(現ムンバイ)の繁栄を象徴する記念碑であった。西欧の様式と現地の伝統を結びつけた点で、当時の建築思潮を色濃く映している。世界遺産の登録にあたっては、東西の建築文化が出会い融合した傑出した例と評価された。改称を経た今日も、一日に数十万人が行き交う現役の駅として、ムンバイの日常を支え続けている。