クライスラービル Chrysler Building
ニューヨークのマンハッタンに建つアール・デコの超高層ビル。自動車王ウォルター・クライスラーのため、ウィリアム・ヴァン・アレンの設計で1930年に完成した。放射状のアーチをステンレス鋼で覆った輝く尖塔で知られ、完成時には世界一高い建物だった。
§1 — 概要概要
クライスラー・ビルは、アメリカ、ニューヨークのマンハッタンに建つ超高層ビルである。1930年の完成時には世界一高い建物となり、放射状に重なるアーチをステンレス鋼で覆った輝く尖塔で知られる。自動車王ウォルター・クライスラーのために建てられた、アール・デコ建築を代表する傑作である。
歴史
クライスラー・ビルは、自動車会社クライスラーの創業者ウォルター・クライスラーの依頼により、建築家ウィリアム・ヴァン・アレンの設計で、1928年に着工し1930年に完成した。当時はより高い建物をめぐる競争が激しく、ヴァン・アレンのかつての共同経営者が設計した四〇ウォール街と高さを競っていた。ヴァン・アレンは、塔の頂部となる尖塔を建物の内部で密かに組み立て、完成間際に一気に立ち上げて、四〇ウォール街とエッフェル塔をも上回る世界一の高さを手にした。もっとも、その栄誉は長くは続かず、翌1931年にはエンパイア・ステート・ビルに抜かれている。
建築的特徴
クライスラー・ビルは、高さ約319メートル、77階を数える鉄骨造の超高層建築である。当時のニューヨークの条例に従い、上層へ向かって段状に後退するセットバックの輪郭をなし、その頂きに、七段の放射状アーチを重ねた冠が載る。この冠はステンレス鋼で覆われ、三角形の窓を穿たれて、陽光のもとで銀色に輝く。31階には自動車の車輪を象った帯が、61階には鷲をかたどった彫刻が突き出し、クライスラー車の意匠を建築に映した、自動車時代を象徴するアール・デコの装飾が施されている。
意義・現在
クライスラー・ビルは、ニューヨークの摩天楼のなかでもひときわ愛される存在であり、アメリカのアール・デコ建築の頂点とされる。1976年には国定歴史建造物に指定された。今日もオフィスビルとして使われ、その輝く尖塔はマンハッタンの空を彩り続けている。