ブラチスラヴァ旧市街に建つカトリック教会。青い漆喰とマヨリカ装飾から「青の教会」と呼ばれ、ハンガリー分離派の建築家レヒネル・エデンが1913年に完成させた、アール・ヌーヴォー建築の傑作である。
§1 — 概要概要
聖エリザベス教会(Kostol svätej Alžbety)は、スロヴァキアの首都ブラチスラヴァの旧市街東部に建つカトリック教会である。淡い青に塗られた外壁と、青釉のマヨリカ瓦やモザイクで知られ、通称「青の教会(Modrý kostolík)」と呼ばれる。ハンガリー出身の建築家レヒネル・エデンが設計した、ハンガリー分離派(ゼツェッシオン)建築の代表作の一つである。堂はハンガリーの聖エリザベート(アールパード家の王女)に捧げられている。
歴史
教会は当初、隣接するギムナジウム(中等学校)の付属礼拝堂として計画された。レヒネル・エデンの設計に基づき、1908年から1913年にかけて建設され、1913年に献堂された。レヒネルは同時に隣接する学校校舎と司祭館も一貫した分離派様式で手がけており、三者は一体の建築群を成している。当時この地はオーストリア=ハンガリー帝国下のハンガリー王国に属しており、教会はハンガリー分離派がその版図の北縁に残した作例にあたる。
建築的特徴
単廊式の平面をもち、前面には高さ約37メートルの円筒形の鐘塔が立つ。当初は円蓋(クーポラ)が構想されたが実現せず、身廊は樽形の天井で覆われた。最大の特色は、外壁から屋根、細部の装飾に至るまでを覆う青の色彩と、曲線的な有機装飾である。レヒネルが好んだハンガリーの民族的モチーフと東方的な意匠が、マヨリカの陶板やジョルナイ社の色釉タイルによって表現され、鉄などの近代素材と結び合わされている。装飾を排したモダニズムとは対照的に、装飾そのものに地域の記憶を託そうとする世紀末の思想が、ここに結晶している。
意義・現在
青の教会は、ウィーンやブダペストで花開いたアール・ヌーヴォー/分離派の運動が、中欧の一都市にもたらした結晶であり、レヒネルの円熟期を示す作品として高く評価されている。スロヴァキアの国家文化財に登録され、ブラチスラヴァを代表する景観の一つとして、今日も現役の教会として用いられている。その愛らしい色彩から、市を象徴する観光名所としても親しまれている。