ドイツ・ケルンのエーレンフェルト地区に建つ、ドイツ最大級のモスク。建築家パウル・ベームの設計により、打ち放しコンクリートの殻とガラスによるドーム、高さ55メートルの二本のミナレットをもつ。2018年に正式に開所した。
§1 — 概要概要
ケルン中央モスク(Cologne Central Mosque / DITIB-Zentralmoschee Köln)は、ドイツ西部の都市ケルンのエーレンフェルト地区に建つモスクである。ドイツ最大級のイスラーム礼拝施設であり、トルコ系移民を中心とする信徒のための宗教・文化の拠点として、トルコ・イスラーム連合(DITIB)が運営する。建築家パウル・ベームの設計により、打ち放しコンクリートの殻状の構造とガラスを組み合わせた現代的な造形で知られる。
歴史
2005年の設計競技でパウル・ベームと父ゴットフリート・ベームの案が選ばれ、2009年11月に定礎式が行われた。2011年には二本のミナレットが所定の55メートルに達して躯体がほぼ完成したが、その後、施工不良や契約をめぐる施主DITIBと建築家側の対立から工事は長く停滞した。主要な建設は2017年にほぼ完了し、同年6月から礼拝に用いられるようになる。2018年9月29日には、トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンを迎えて正式な開所式が行われた。建設をめぐっては、ミナレットの高さや施設の象徴性、運営団体の性格などをめぐり、賛否双方からさまざまな議論が交わされた。
建築的特徴
礼拝堂は、同心円状に積み重なる打ち放しコンクリートの殻と、その間を埋めるガラスの帯によって構成される。この構成は、ドームを開きかけた蕾のように見せ、内部に豊かな自然光を導く。オスマン建築に由来するドームとミナレットのモチーフを、表現主義的なコンクリート建築の語彙で再解釈した点に特徴がある。コンクリートとガラスの広い面は「開かれていること」の象徴とされ、街路から礼拝空間へ続く大階段や、各宗教に開かれた広場・バザールも設けられた。地熱を利用した設備など、環境性能にも配慮されている。
意義・現在
ケルン中央モスクは、ヨーロッパ有数の規模をもつモスクであり、ドイツにおけるイスラーム建築の存在を可視化した建築として位置づけられる。伝統的なオスマン様式のモチーフを現代ドイツの建築言語で表現した点は、宗教建築の新たな試みとして注目された。一方で、運営団体DITIBとトルコ政府との関係などをめぐる議論は今も続いている。礼拝の時間外には一般にも公開され、信徒以外の来訪者も受け入れている。