スタヴォフスケー劇場 Estates Theatre
プラハ旧市街に建つ新古典主義の劇場。1783年に開場し、1787年にモーツァルトが歌劇《ドン・ジョヴァンニ》をみずから指揮して世界初演した場として知られる。
§1 — 概要概要
スタヴォフスケー劇場(Stavovské divadlo/英 Estates Theatre)は、チェコの首都プラハの旧市街に建つ劇場である。1783年の開場以来、建物・舞台ともに18世紀の姿を比較的よく残し、ヨーロッパに現存する新古典主義劇場の代表例のひとつに数えられる。とりわけ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが歌劇《ドン・ジョヴァンニ》をみずから指揮して世界初演した劇場として、音楽史の上で特別な位置を占める。
歴史
劇場は、啓蒙思想のもとで「演劇を広く市民に開く」気運が高まった18世紀後半、ボヘミアの貴族フランツ・アントン・フォン・ノスティツ=リーネックの出資によって建てられた。設計のスケッチは貴族カスパル・ヘルマン・フォン・キューニグルが起草し、宮廷建築家アントン・ハフェネッカーが実施設計と建設を担って、わずか二年足らずで竣工した。開場まもない1787年には《ドン・ジョヴァンニ》が、1791年には《皇帝ティートの慈悲》が初演されている。19世紀にはヨゼフ・ニクラスやカレル・ポラックらの手で改修・増築が重ねられた。チェコ民族復興運動の舞台ともなり、のちにチェコ国歌となる旋律もこの劇場で初めて歌われている。1948年には隣接する国民劇場に統合され、その一部となった。
建築的特徴
外観は、簡潔なペディメントと古典的なオーダーを用いた端正な新古典主義の構成をとる。過剰な装飾を避け、均整のとれた比例によって品位を示す姿勢は、バロックの劇性から離れた啓蒙期の趣味を反映している。内部は馬蹄形の平面に四層の桟敷をめぐらせ、音響と見通しに優れた当時の宮廷劇場の典型を示す。客席数を抑えた親密な空間は、モーツァルトの時代のオペラ上演の響きを今に伝える数少ない遺構として貴重である。
意義・現在
スタヴォフスケー劇場は、現在もプラハ国民劇場の一部として、オペラ・バレエ・演劇の上演に使われている。チェコ共和国の国定文化記念物に指定され、世界遺産であるプラハ歴史地区の区域にも含まれる。映画『アマデウス』の撮影に用いられたことでも知られ、モーツァルトゆかりの地として今日も多くの来訪者を集めている。