大クレムリン宮殿 Grand Kremlin Palace
モスクワのクレムリン内に立つ宮殿。皇帝ニコライ1世の命でC・トーンらが1838〜1849年に建てた。多面宮など古い建物を取り込み、ロシア・ビザンティン様式でまとめた歴史主義の代表作で、現在は大統領の儀礼施設として使われる。
§1 — 概要概要
大クレムリン宮殿は、ロシアの首都モスクワのクレムリンの内に立つ宮殿である。皇帝ニコライ1世の命により19世紀半ばに建てられ、皇帝のモスクワにおける居所として用いられた。古いロシアの宮殿や聖堂を一つの建物群に取り込み、ロシアの伝統を再解釈した歴史主義の様式でまとめられている。現在はロシア大統領の公式の儀礼施設として用いられている。
歴史
宮殿は、皇帝ニコライ1世の命を受けた建築家コンスタンチン・トーンを中心とする設計陣によって計画され、1838年に着工された。工事は1849年に完了した。トーンは、西欧の様式の模倣を排してロシア固有の建築の伝統に立ち返ることを目指しており、この宮殿はそうした「ロシア・ビザンティン様式」の代表作となった。建設にあたっては、クレムリンに古くからあった多面宮(グラノヴィタヤ palata)やテレム宮殿、複数の聖堂が取り壊されることなく新たな宮殿に組み込まれた。
建築的特徴
宮殿は、外観こそ19世紀の歴史主義によるが、その内部には14世紀から17世紀にかけて建てられた古い建物が抱え込まれており、ロシアの歴代の建築様式が一つの建築群のうちに重なり合っている。新たに造られた本館には、聖ゲオルギウスの間、ウラジーミルの間、アレクサンドルの間、聖アンドレイの間、エカテリーナの間という五つの壮麗な式典の広間が設けられた。これらの広間はロシア帝国の勲章にちなんで名づけられ、それぞれ豪華な装飾で飾られている。建物全体はおよそ700の部屋を擁する大規模なものである。
意義・現在
大クレムリン宮殿は、19世紀ロシアにおける民族的様式の探求を体現する建築として重要な位置を占める。帝政期には皇帝の戴冠式をはじめとする国家の重要な儀式の舞台となった。ソ連時代を経て、現在はロシア連邦大統領の公式の儀礼の場として用いられ、国賓の接遇や叙勲、条約の調印などがこの宮殿で行われている。クレムリンの歴史的建造物群の一部として、世界遺産にも登録されている。