カサブランカの大西洋に臨むモロッコ最大のモスク。1993年落成、設計はフランス人建築家ミシェル・パンソー。高さ210メートルのミナレットを擁し、伝統工芸と現代技術を融合させた大規模建築である。
§1 — 概要概要
ハサン2世モスクは、モロッコのカサブランカ、大西洋に臨む岬に建つモスクである。モロッコ最大、アフリカでも有数の規模を誇り、高さ210メートルのミナレットを備える。設計はフランス人建築家ミシェル・パンソー。国王ハサン2世の発意により、伝統的なモロッコの工芸技術と現代の建設技術を融合させた大規模建築として計画された。屋内に2万5千人、外部広場に8万人、あわせて10万人を超える礼拝者を収容できる。
歴史
国王ハサン2世は1980年、カサブランカに記念碑的なモスクを建てる意志を表明した。「神の玉座は水の上にあった」というクルアーンの一節に着想を得て、海に張り出した岩礁の敷地が選ばれた。建設は1986年7月に始まり、施工は土木大手のブイグが担い、モロッコ各地から集まった1万人の職人(マアレム)が装飾を手がけた。国王の60歳の誕生日にあたる1989年の完成を目指したが工期は延び、預言者ムハンマド生誕祭にあたる1993年8月30日に落成式が行われた。建設費は国民からの自発的な寄付によってまかなわれた。
建築的特徴
意匠は、モロッコ=アンダルシアの伝統様式に深く根ざしている。ゼリージュの幾何学的なタイル装飾、彫りを施した漆喰、レバノン杉の細密な木彫天井が随所を彩り、馬蹄アーチや角柱状のミナレットはアルモハド朝のクトゥビーヤやヒラルダの塔を想起させる。一方で、数分で開閉する可動式の屋根、暖房を備えた床、ミナレット頂部からメッカの方角へ照射されるレーザーなど、現代技術も取り入れられている。建物の一部は海上に張り出し、礼拝者が海の上で祈っているかのような感覚を生む。白い大理石を主体とした手仕事の意匠が、全体を貫いている。
意義・現在
ハサン2世モスクは、20世紀末のモロッコにおける伝統工芸の継承と国家的事業の象徴である。建設に際して集約された職人の技術を次代へ伝えるため、2012年には複合施設内に伝統工芸アカデミーが開設された。モロッコでは数少ない、非ムスリムも見学できるモスクの一つであり、カサブランカを代表するランドマークとなっている。海に臨む立地と巨大なミナレットは、都市の景観を特徴づけている。
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